
この記事はこんな人におすすめです
スタートアップでエンジニア採用を担当しているが、なかなか結果が出ていない方
求人票を出してもエンジニアが集まらない原因がわからない方
フリーランスエンジニアの活用を検討しているが、進め方がわからない方
「求人票を出してもエンジニアが集まらない」「スカウトを送っても返信がない」と頭を抱えている採用担当者の方も多いのではないでしょうか。スタートアップにとってエンジニア採用は、事業成長を左右する最重要課題のひとつです。しかし、採用手法を変えるだけでは解決しないケースが少なくありません。
背景には、ITエンジニアの需要と供給のギャップという構造的な問題があります。
この記事では、スタートアップがエンジニア採用でつまずく本当の理由を整理した上で、採用戦略の設計から「正社員採用だけではない」という視点の転換まで、実務で活かせる情報を解説します。手法の話をする前に、まず「なぜうまくいかないのか」の原因を言語化することが、最初の一歩です。読み終える頃には、次に取るべき具体的なアクションが見えてくるはずです。
- 1. スタートアップのエンジニア採用が難しい本当の理由
- (1)エンジニア採用市場の構造的な問題
- (2)正社員採用という「競争率の高い土俵」を選び続けている
- (3)採用担当者とエンジニアの「言語の壁」
- 2. スタートアップだからこそ活かせる採用の強み
- (1)モダンな開発環境で、エンジニアのスキルを存分に活かせる
- (2)0→1フェーズの面白さとキャリア成長の速さ
- (3)ビジョン共感採用が機能するフェーズ
- 3. スタートアップに有効なエンジニア採用の戦略
- (1)ダイレクトリクルーティングでスカウト精度を上げる
- (2)採用広報・エンジニアブログで認知を積み上げる
- (3)リファラル採用で信頼を起点にした人脈を活用する
- 4. 正社員採用だけに絞らない「戦う土俵の選び方」
- (1)フリーランス採用という競争率の低い選択肢
- (2)フリーランスからの正社員転換(トランジション採用)という手法
- (3)スタートアップに向いている採用チャネルの使い分け
- 5. まとめ:スタートアップのエンジニア採用に必要な視点の転換
1. スタートアップのエンジニア採用が難しい本当の理由

(1)エンジニア採用市場の構造的な問題
エンジニア採用が難しいのは、スタートアップ固有の問題ではありません。市場全体がエンジニアの売り手市場に傾いているという構造的な背景があります。
経済産業省が公表した「IT人材需給に関する調査」(2019年)*によれば、2030年時点でのIT人材不足は最大で約79万人にのぼると推計されています。この数字はIT産業全体の話ですが、特にWeb・アプリ開発系のエンジニアは需要が旺盛で、採用競争が激しい状態が続いています。
エンジニアの有効求人倍率は他の職種と比較しても高い水準を維持しており、転職を考えているエンジニアが複数社から並行してオファーを受けるのは珍しくありません。採用側が「良い人を採りたい」と思って動き出した時点で、すでに競争相手が多く存在しているのが現実です。
(2)正社員採用という「競争率の高い土俵」を選び続けている
多くのスタートアップが直面している問題のひとつに、「正社員採用のみを前提にしている」という思考の固定化があります。
正社員採用の求人は、大手企業・メガベンチャー・スタートアップが同じ土俵で競い合う世界です。知名度も資金力もある企業と真正面から戦うことになるため、スタートアップにとっては不利な構造といえます。年収水準・福利厚生・ブランド力といった指標で比較されると、後れを取りやすいのは否めません。
しかし、エンジニアの働き方は正社員だけではありません。フリーランスや業務委託という形態で活躍するエンジニアの数は年々増加しており、「フリーランス採用」という戦場は、正社員採用と比べて競争率が低いという特徴があります。この選択肢を視野に入れるかどうかで、採用活動の難易度は大きく変わります。
(3)採用担当者とエンジニアの「言語の壁」
エンジニア採用がうまくいかないもうひとつの根本原因として、採用担当者とエンジニアの間にある「言語の壁」があります。これは技術用語の問題だけではありません。
現場のエンジニアから「TypeScriptが使える人が欲しい」「マイクロサービス経験者を」と要件を受け取った採用担当者が、その意味を深く理解しないまま求人票やスカウト文を作成してしまうケースがあります。すると、スカウト文はテンプレート的な表現になり、エンジニアに「自分に向けて書かれたメッセージではない」と判断されてしまいます。
エンジニアは採用活動においてプロの目線を持っています。「この会社が使っている技術スタックは何か」「自分のスキルセットと合う仕事があるか」「採用担当者がエンジニアリングを理解しているか」を、スカウト文や求人票からすばやく読み取ります。訴求の精度を上げるためには、採用担当者がエンジニアリングへの一定の理解を持つか、あるいはエンジニアと密に連携して採用設計を行うことが必要です。
2. スタートアップだからこそ活かせる採用の強み
(1)モダンな開発環境で、エンジニアのスキルを存分に活かせる
大手企業では既存システムの制約や承認フローの関係で、使用技術が固定されているケースが少なくありません。一方、スタートアップでは新しいフレームワークやツールを積極的に取り入れている現場が多く、エンジニアにとって「自分のスキルが実際に使える環境」である場合が多いです。
転職を検討しているエンジニアの多くは、現職で培ったスキルをより発揮できる場を求めています。求人票やスカウト文では「使っている技術スタック」を具体的に明示することで、スキルセットが合うエンジニアへの訴求力が高まります。
例1)「バックエンドはGo、インフラはTerraform+AWS、フロントはNext.jsで構成しており、いずれも直近2年以内に導入した技術です」
例2)「社内勉強会を月2回開催しており、LLMを活用した開発プロセスの改善など、話題の技術を業務に取り入れる文化があります」
使っている技術をそのまま伝えるだけで、「自分が活躍できそうか」をエンジニアが判断しやすくなります。スペックの羅列ではなく、「なぜその技術を選んでいるか」を一言添えられると、さらに印象が変わります。
(2)0→1フェーズの面白さとキャリア成長の速さ
スタートアップの初期フェーズに参加するエンジニアは、プロダクトをゼロから設計・開発する経験を得られます。要件定義・アーキテクチャ設計・実装・運用保守まで一貫して関与できるのは、大規模な組織では担当領域が分断されているために得ることが難しい経験です。
キャリア成長の観点からは、「短期間で幅広い意思決定経験が積める」「事業の方向性に直接影響を与えるプロダクト開発に携われる」という点が、成長志向のエンジニアに響きます。ただし、この訴求はフェーズに依存します。プロダクトがグロースフェーズに入った後は「0→1よりも1→10の安定した開発経験が積める」という異なる切り口に転換する必要があります。
(3)ビジョン共感採用が機能するフェーズ
スタートアップの採用活動において、報酬や福利厚生だけで大手と競い合おうとすることは得策ではありません。スタートアップが本来持っている強みは、「このプロダクトで世の中をどう変えるか」というビジョンの訴求力にあります。
ビジョン共感採用が機能しやすいのは、特に創業初期から数十名規模のフェーズです。なぜなら、エンジニアが「この会社の方向性に共感して一緒に作りたい」と感じる余地が大きいからです。採用担当者だけでなく、CTOや創業者が採用プロセスの早い段階でエンジニア候補者と直接対話する機会を設けることで、ビジョンの本気度が伝わりやすくなります。
一方で、ビジョンだけで採用を進めようとすると、入社後のミスマッチにつながりやすいという側面もあります。具体的な業務内容・使用技術・チーム構成も合わせて丁寧に伝えることが大切です。

3. スタートアップに有効なエンジニア採用の戦略
(1)ダイレクトリクルーティングでスカウト精度を上げる
ダイレクトリクルーティングとは、企業が候補者に対して直接スカウトメッセージを送り、採用につなげる手法です。エンジニア採用における主要なアプローチのひとつで、転職潜在層にもリーチできる点が特徴です。
しかし、多くのスタートアップが陥りがちなのが「スカウト文のテンプレート化」です。候補者のGitHubやQiita、技術ブログを確認した上で、その方の実績や使用技術に言及する個別化されたメッセージでなければ、エンジニアの目には留まりません。
例1) 「GitHubでのOSSコントリビュートや〇〇リポジトリの概要を拝見させていただき、当社の文化ともマッチするのでは、と考えております。是非一度お話させてください。」
例2)「ご投稿されたQiitaの記事(タイトル)を読み、弊社が直面しているアーキテクチャ上の課題と重なる部分を感じました」
スカウト文に「なぜあなたに連絡したか」を具体的に示すことが、返信率を高める最大のポイントです。

(2)採用広報・エンジニアブログで認知を積み上げる
スタートアップが採用において知名度の不足を補うには、採用広報やエンジニアブログの継続的な発信が有効です。即効性はありませんが、長期的に見ると採用コストを下げる効果があります。
具体的には、技術的な取り組みをエンジニアが自らの言葉で発信する「エンジニアブログ」、採用の背景や期待することを伝える「採用ノート」、CTOや創業者のSNS発信などが挙げられます。エンジニアが読んで「この会社は技術に真摯に向き合っている」と感じるコンテンツが、採用ブランディングの基盤になります。
発信内容は、技術選定の意思決定プロセスや障害対応の振り返り、チームの開発文化など、具体性の高いものが効果的です。「働き方がフレキシブルです」「成長できる環境です」という抽象的な情報発信では、エンジニアには響きにくいことを念頭に置きましょう。
(3)リファラル採用で信頼を起点にした人脈を活用する
リファラル採用(社員紹介採用)は、採用品質が高く、入社後の定着率も高い傾向があります。スタートアップにおいては特に、既存エンジニアの人脈が採用の有力なルートになります。
ただし、リファラルを機能させるには「社員が自信を持って紹介できる環境であること」が前提です。現場のエンジニアが働き方・技術レベル・チームの雰囲気に満足していなければ、自然なリファラルは生まれません。
社内での定期的な採用ニーズの共有、紹介のハードルを下げる仕組み(例:カジュアル面談のセッティングを会社側が担う)、紹介した場合のフィードバックの透明性確保などを整えることで、リファラル採用が動き始めます。
4. 正社員採用だけに絞らない「戦う土俵の選び方」
(1)フリーランス採用という競争率の低い選択肢
エンジニア採用において、「正社員採用に固執しすぎている」ことが採用難の一因になっているスタートアップは少なくありません。フリーランスエンジニアとの業務委託契約という選択肢は、正社員採用よりも競争率が低く、スタートアップにとって活用しやすい戦場です。
フリーランスエンジニアは、特定のプロジェクトや期間に合わせて柔軟に関与できる専門家です。正社員採用が難しい高度なスキルを持つエンジニアとも、業務委託という形であれば契約できるケースがあります。また、採用に至るまでの期間が正社員採用より短いことが多く、急ぎの開発ニーズにも対応しやすいという特性があります。
フリーランス採用を検討する際は、「業務委託だからマネジメントが難しい」という先入観を持ちすぎないことも大切です。適切な業務設計と定期的なコミュニケーションができれば、フリーランスエンジニアはチームに深く貢献してくれる存在になります。
(2)フリーランスからの正社員転換(トランジション採用)という手法
フリーランス採用のさらに進んだ形として、「フリーランスとして働いてもらった後、正社員への転換を提案する」というアプローチがあります。これはトランジション採用と呼ばれ、採用リスクを段階的に下げながら正社員採用につなげられる手法です。
正社員採用においてよくある課題のひとつが、「入社後のミスマッチ」です。面接だけでは、実際の技術力・仕事のスタイル・チームとの相性を見極めるには限界があります。フリーランスとしてまず一緒に仕事をすることで、互いの理解が深まった上で正社員採用の意思決定ができます。
エンジニア側にとっても、転職という大きな意思決定の前に「実際の職場環境や仕事内容を体験できる」という安心感があります。スタートアップへの転職に慎重なエンジニアにアプローチする手段としても有効です。
(3)スタートアップに向いている採用チャネルの使い分け
採用チャネルはフェーズや採用したいエンジニアのタイプに応じて使い分けることが重要です。一般的な求人票掲載に加えて、以下のような観点で検討してみてください。
エンジニアのコミュニティへの参加や技術イベントへの協賛は、採用に直結しないように見えて、中長期的なブランディングに効果があります。特に技術力の高いシニアエンジニアは、求人票よりも「信頼できるエンジニアからの紹介」や「技術コミュニティでの評判」を重視する傾向があります。
また、フリーランスエンジニア向けの採用媒体やサービスを活用することで、正社員採用では接触しにくい層にアプローチできます。正社員転換に前向きなフリーランスエンジニアも存在しており、業務委託から始まって長期的なパートナーシップに発展するケースもあります。
採用チャネルごとに「即効性があるか」「どのタイプのエンジニアに届くか」「費用対効果はどうか」を整理した上で、複数のチャネルを組み合わせることが、採用活動の安定性につながります。

5. まとめ:スタートアップのエンジニア採用に必要な視点の転換
スタートアップでエンジニア採用を行う難しさの本質は、「採用手法が足りないこと」ではなく、「戦う土俵の選び方と訴求設計の問題」にあります。IT人材不足という構造的な背景を理解した上で、自社のフェーズと強みに合った戦略を設計することが出発点です。
大手企業と同じ土俵で正社員採用に固執するのではなく、スタートアップならではの技術的魅力・ビジョン共感・裁量の大きさを前面に出すこと、そして、正社員採用とフリーランス採用を組み合わせることで、競争の激しい戦場を避けながら自社に合ったエンジニアに出会える可能性が広がります。
エンジニアは一人の専門家として、仕事環境・技術的な成長・働く意味を真剣に考えています。採用担当者がエンジニアの目線を理解し、誠実なコミュニケーションを重ねることが、採用活動の精度を高める最も確実なアプローチです。
フリーランスエンジニアとの業務委託から始めて正社員転換を目指す「トランジション採用」を含め、採用の入り口を広げることで、これまでアプローチできなかった優秀なエンジニアと出会える機会が生まれます。スタートアップの採用活動に、ぜひ視点の転換を取り入れてみてください。

この記事を書いた人
re:shine編集部
エンジニアと企業のより良いマッチングを目指し、採用成功に役立つ多彩なテーマを発信しています。深刻な人材不足や働き方の多様化など、変化の激しいエンジニア採用市場において、採用担当者の皆様に寄り添い、明日から活用できる情報をお届けします。
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