
この記事はこんな人におすすめです
業務委託で関わるフリーランスエンジニアに「長く一緒に働いてほしい」と感じているが、正社員への打診をどうすればいいか分からずにいる採用担当者・CTO
正社員採用の競争激化に疲弊しており、別のアプローチからエンジニア採用を立て直したいと考えているスタートアップの経営者・採用責任者
業務委託からの正社員転換(トランジション採用)に興味はあるが、法的なリスクや正しい設計方法が分からず踏み出せていない方
業務委託で一緒に働くフリーランスエンジニアがいる。一緒にプロダクトをつくる中で「この人に長く関わってほしい」と感じるようになった。そう思いながらも、正社員への転換をどう打診すればよいか分からず、時間だけが過ぎていってしまうという状況を抱える採用担当者やCTOの方は多いのではないでしょうか。
エンジニア採用の難しさが叫ばれる現在、「正社員採用チャネルだけで優秀なエンジニアを獲得する」という戦略は年々難しくなっています。一方、すでに業務委託で関係を築いたフリーランスエンジニアを正社員として採用することは、ミスマッチが少なく、スキルも実証済みという大きなアドバンテージがあります。
この記事では、業務委託エンジニアを正社員として迎えるべき「3つのサイン」、エンジニアに寄り添った打診の設計方法、そして転換を成功させるための採用設計まで、採用担当者の実務に役立つ視点でお伝えします。読み終える頃には、次に取るべき一歩が具体的に見えてくるはずです。
- 1、なぜ今、フリーランスエンジニアの正社員転換が注目されているのか
- (1)正社員採用の競争率が高すぎる現実
- (2)フリーランス採用という"倍率の低い土俵"から始める発想転換
- 2、業務委託エンジニアを正社員化するメリットと落とし穴
- (1)ミスマッチが起きにくい——一緒に働いた実績が最強の選考プロセス
- (2)見落とされがちな落とし穴——「なんとなく」声かけは失敗する
- 3、正社員転換を打診すべき「3つのサイン」
- (1)サイン① プロダクトへの主体的な関与が増えてきた
- (2)サイン② エンジニア自身から「将来の関わり方」への言及が出た
- (3)サイン③ チームや組織への帰属意識が自然と芽生えている
- 4、エンジニアへの「正社員転換の打診」——伝え方の設計
- (1)「選考」ではなく「一緒に未来を描く対話」として設計する
- (2)収入・キャリア・自由度——エンジニアが気にする3つの不安への答え方
- 5、トランジション採用という考え方——業務委託から正社員転換へ
- (1)「転換前提」ではなく「転換可能性の共有」として設計する
- (2)業務委託期間を「相互理解の期間」として活かすには
- (3)偽装請負にならないための3つの原則
- 6、まとめ:フリーランスエンジニアとの関係を、長期的な仲間へ
1、なぜ今、フリーランスエンジニアの正社員転換が注目されているのか

(1)正社員採用の競争率が高すぎる現実
エンジニアの正社員採用が困難であることは、採用担当者なら肌感覚として持っているはずです。経済産業省が発表したIT人材需給に関する調査(*1)によれば、2030年には最大で約79万人のIT人材が不足するとも試算されており、構造的な採用難は今後も続く見通しです。
*1 参照:経済産業省「IT人材需給に関する調査」2019年
特に中堅層(経験4〜6年程度)以上のエンジニア採用は激戦状態が続いています。正社員採用の間口だけで戦っていては、競争が熾烈すぎて疲弊する一方です。
(2)フリーランス採用という"倍率の低い土俵"から始める発想転換
一方、フリーランス・業務委託市場は、正社員採用市場とは構造的に異なります。厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」(*2)によれば、2024年度におけるシステムエンジニア(Webサービス開発)の有効求人倍率は2.57倍と、全職種平均(1.25倍)の約2倍に達しており、正社員採用市場では企業間の獲得競争が常態化しています。一方、フリーランス・業務委託市場では、エンジニアは複数の企業と並行して契約できるため、1人のエンジニアに対して複数の企業が一斉に奪い合う構造になりにくく、正社員採用ほどの競争激化が起きにくい特性があります。つまり、同等スキルのエンジニアと出会える可能性は、フリーランス採用の方がはるかに高いのです。
*2 参照:厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)令和6年度分」2025年5月
ここで重要な発想の転換があります。「正社員採用が難しいなら、最初から業務委託でエンジニアとの関係を始め、その後に正社員転換を目指す」という順序の逆転です。この戦略は現在「トランジション採用」と呼ばれ、採用担当者の間で注目を集めています。
こうした動きはフリーランスエンジニア側にも変化をもたらしています。フリーランス人口が拡大を続ける一方で、収入の不安定さやAIの台頭を背景に、正社員への転換を希望するエンジニアが増えているという声も業界内で聞かれるようになっています。例えば、転職支援サービスの仲介実績では、フリーランスからの正社員転職数が近年大幅に増加しているとの報告もあります(*3)。企業にとっては、こうした意向を持つエンジニアと業務委託を通じて出会い、関係を深めることが、正社員転換の現実的なルートとして機能しやすい環境になっているといえます。
*3 参考:ITmedia ビジネスオンライン「なぜ、今『会社に戻る』のか フリーランス→正社員が2.8倍の背景」2026年5月
フリーランスエンジニアとの関係構築から始め、実際に一緒に仕事をする中で相性やスキルを確認してから正社員として迎える。この流れが、採用ミスマッチの低減と優秀人材の確保を両立させる手段として機能しているのです。
2、業務委託エンジニアを正社員化するメリットと落とし穴
(1)ミスマッチが起きにくい——一緒に働いた実績が最強の選考プロセス
通常の正社員採用では、書類・面接を経て採用を決めますが、どれほど丁寧に選考しても入社後に初めて分かることが多くあります。技術力はもちろん、コミュニケーションスタイル、チームへの溶け込み方、プロダクトへの関心度など、面接だけでは計り知れない要素がそこにあります。
その点、業務委託で一定期間ともに働いてきたエンジニアは、すでに実務で実力が証明されています。スキルの確認はもちろん、チームとのフィット感、働き方のスタイル、文化的な相性まで把握できている状態で正社員転換を打診できる。これは通常の採用プロセスでは得られない、大きなアドバンテージです。
例:業務委託エンジニアとの協働期間中に確認できること
・技術力の実証(実際のコード品質・設計力・問題解決のプロセス)
・コミュニケーションの質(報告・相談の仕方、チームとの協力姿勢)
・プロダクトへの関心度(自発的な改善提案・課題への当事者意識)
・組織文化との相性(価値観・仕事へのスタンスの共鳴度合い)
実際にトランジション採用を経験した企業からも、こうした声が聞かれます。「業務を通じて候補者の能力や適性、会社との相性を深く確認できるため、ミスマッチが少なく、採用後の定着率が高まり、即戦力としてより早期から貢献してもらえる」——これは、re:shineを通じてフリーランスエンジニアの正社員転換を実現したある企業の代表の言葉(*3)です。「知らない人を採用する」のではなく「信頼できる仲間を正式に迎える」という感覚に近く、双方にとって安心感のある移行ができます。
*3 参照:re:shine事例紹介「企業もフリーランスも納得!ミスマッチをなくすトランジション採用(Patentfield株式会社)」2026年5月
(2)見落とされがちな落とし穴——「なんとなく」声かけは失敗する
一方で、準備不足のまま正社員転換を打診することには、大きなリスクが伴います。最も多い失敗パターンは、タイミングや伝え方を十分に考えずに「正社員になりませんか?」とだけ打診してしまうケースです。
フリーランスエンジニアにとって、正社員への転換は収入・自由度・キャリアに関わる大きな意思決定です。「条件が分からないまま打診された」「自分のキャリアにとって何がメリットなのかが伝わってこない」と感じると、たとえ会社への好意があったとしても断られてしまう可能性があります。
さらに、打診が一方的・唐突に感じられると、その後の業務委託関係にも影響が出ることがあります。「断ったら関係が変わってしまうのでは」と相手が不安を感じれば、それだけで協働の質が下がるリスクがあります。声をかける前に、相手の状況・意向・不安を想定した準備が必要です。
3、正社員転換を打診すべき「3つのサイン」
「いつ声をかければいいか分からない」という悩みは多くの採用担当者が抱えています。そこで、正社員転換の打診を検討すべき3つのサインを整理しました。これらのサインが重なるほど、打診の成功確率は高まります。
(1)サイン① プロダクトへの主体的な関与が増えてきた
業務委託の契約範囲を超えて、プロダクトの改善提案や仕様上の課題指摘を自発的にしてくれるようになった——これは、そのエンジニアがプロダクトを「自分ごと」として捉え始めているサインです。
例:主体的関与が増えたサインの具体例
・「この設計だと後々大変になるので、こう変更してみませんか?」
・ミーティング外でもSlackでフィードバックや改善案を送ってくる
・バグ修正だけでなく、根本原因の解消まで考えて動いている
・「次のフェーズではどう対応しますか?」と先の話題を自分から出す
業務委託エンジニアは本来、委託された業務を完結させることが責務です。その範囲を超えて行動する背景には、プロダクトへの関心と、もっと深く関わりたいという意欲があることが多いです。この変化を見逃さずにキャッチできると、打診のタイミングとして非常に有効です。
(2)サイン② エンジニア自身から「将来の関わり方」への言及が出た
フリーランスエンジニアの中には、正社員への転換を心理的に検討しているケースが一定数あります。ファインディ株式会社の「IT/Webエンジニア調査」(2025年)(*4)では、フリーランスエンジニアの3人に1人が正社員転換を検討したことがあると回答しています。
またre:shineがサービス利用者を対象に実施した独自調査(*5)では、55.6%がトランジション採用(業務委託から正社員への転換)に意欲を示しており、フリーランスとして働きながらも将来的な正社員転換の可能性を視野に入れているエンジニアは決して少なくありません。
*4 参照:ファインディ株式会社「IT/Webエンジニア調査」 2025年3月
*5 参照:株式会社メタップスホールディングス(現株式会社マイクロニティ)「トランジション採用に関する利用者アンケート」2025年6月
「ここで長く関わっていきたいと思っています」「このプロダクトの次の展開も見届けたい」のような前向きな気持ちが言葉に出てきたときが打診の好機です。エンジニア自身がその関係をより深く、より安定的なものにしたいと思い始めているシグナルとなります。
(3)サイン③ チームや組織への帰属意識が自然と芽生えている
業務委託として参画している中で、「うちのチームとして」という言語感覚が自然に出てきたときや、社内のメンバーと自発的に関係を築き、チームイベントや非公式な場にも積極的に参加するようになったときは、その人がすでに心理的にはチームの一員として機能している証拠です。
帰属意識は強制して生まれるものではありません。自然と芽生えているということは、その環境・チーム・ミッションに共鳴しているということです。この状態は正社員転換後の定着率にも直結します。3つのサインの中でも、このサインが見られるときは特に打診の成功率が高い状況といえます。

4、エンジニアへの「正社員転換の打診」——伝え方の設計
(1)「選考」ではなく「一緒に未来を描く対話」として設計する
打診の場面で最もやってはいけないのは、「正社員採用の選考」として設計してしまうことです。書類提出を求める、複数の面接を組む、合否を伝えるなどのような選考フローは、すでに信頼関係のある相手に対して「あなたをジャッジします」というメッセージとして届いてしまいます。
効果的な打診は、「選考」ではなく「キャリアについての率直な対話」として設計することです。「一緒に働いてきた中で、こういうことを感じていた。あなたの今後のキャリアについて、一度ゆっくり話したい」という入り口は、相手に警戒心を抱かせにくいです。
打診の対話設計:伝え方のポイント
・「ご相談したいことがある」というトーンで場を設定する
・「選考ではなく、これからの関わり方についての対話の場」と最初に明示する
・一緒に働いてきた中での具体的な評価・感謝を伝える
・「あなたのキャリアにとって何がメリットになるか」を一緒に考える姿勢を示す
・結論を急がず、エンジニアが考える時間を十分に確保する
エンジニアへのスカウト・打診においては、相手を主役にすることが何より重要です。「うちに来てほしい」という企業側の要求を伝えるのではなく、「あなたのキャリアにとって、この関係をどう発展させることが良いか、一緒に考えたい」というスタンスが、誠実さとして伝わります。
(2)収入・キャリア・自由度——エンジニアが気にする3つの不安への答え方
正社員転換を検討するフリーランスエンジニアが持つ不安は、おおむね3つに集約されます。これらへの答えを事前に準備しておくことが、打診を成功させる鍵です。
不安① 収入が下がるのではないか
フリーランスとして得ている報酬と正社員の給与を単純比較したとき、手取り額が下がることへの懸念です。
解決方法:社会保険・賞与・各種手当を含めたトータルの報酬水準を具体的に提示しましょう。業務委託期間中の支払い費用を正社員採用コストに充当する設計も、双方にとってフェアな条件交渉につながります。
不安② 自由度を失うのではないか
フリーランスとして享受してきた裁量や柔軟な働き方が失われることへの懸念です。
解決方法:フルリモート・フレックスタイム・副業の可否など、具体的な勤務条件を明示しましょう。「正社員になるから自由がなくなる」という先入観を、事実でもって解消する準備が必要です。
不安③ キャリアにとってプラスになるのか
フリーランスで多様な案件を経験することで磨かれるキャリアと比較したとき、一社に絞ることへの機会損失への懸念です。
解決方法:「このプロダクト・この組織でしか積めない経験」を具体的に伝えましょう。マネジメントや技術リードへのキャリアパスを示すことが有効です。
5、トランジション採用という考え方——業務委託から正社員転換へ
(1)「転換前提」ではなく「転換可能性の共有」として設計する
ここまで「業務委託から正社員転換を打診する」流れを解説してきましたが、より戦略的な企業はこの流れをあらかじめ「設計」しています。それがトランジション採用という考え方です。
ただし、ここで注意が必要なのは「転換を前提とした業務委託契約」は、設計の仕方によっては偽装請負と認定されるリスクがあるという点です。業務委託契約である以上、指揮命令関係を持たない独立した契約として運用することが大原則です。「最初から正社員にするつもりで業務委託を使う」という設計は、法的なリスクを伴います。
正しい設計は「転換前提」ではなく、「転換の可能性を双方がオープンに持ちながら、協働を通じて互いを知る期間として業務委託を活用する」というものです。この違いは小さいようで、実務上も法的にも大きな差があります。
(2)業務委託期間を「相互理解の期間」として活かすには
トランジション採用を正しく機能させるためには、業務委託期間を「お試し採用期間」としてではなく、「企業とエンジニアが対等に互いを見極める期間」として設計することが重要です。
業務委託期間中に自然と確認できること
技術スキルの実証(担当領域の実務を通じた確認)
チームカルチャーとのフィット(価値観・コミュニケーションスタイル)
プロダクトへのコミット意欲(自発的な提案・課題発見の姿勢)
エンジニア側の意向(定期的な対話を通じた相互確認)
重要なのは、業務委託開始時点で「将来的な正社員転換の可能性について、双方がオープンに話せる関係を作っておく」ことです。「転換を義務づける」のではなく「転換という選択肢があることを共通認識として持つ」という設計が、エンジニアにとっても心理的な安心感につながります。
また、正社員転換時の条件感(給与水準・業務内容・勤務形態など)の目安を事前に共有しておくことも有効です。ただしこれはあくまで「参考情報の共有」であり、業務委託契約の内容に転換条件を盛り込むことは避けるべきです。
(3)偽装請負にならないための3つの原則
トランジション採用を適切に運用するにあたり、以下の3点は必ず守る必要があります。
指揮命令を持たない:業務委託期間中は、業務の進め方・時間管理・手順の細部に対して企業側が指示・管理を行わないこと
転換を強制しない:正社員転換はあくまで双方の合意によるものであり、転換しないことを理由に契約条件を不利に変更しないこと
契約内容を実態に合わせる:業務委託契約の内容と実際の働き方が乖離しないよう、契約書と運用を一致させること
なお、具体的な契約設計や法的リスクの判断については、社会保険労務士や弁護士への相談を推奨します。
6、まとめ:フリーランスエンジニアとの関係を、長期的な仲間へ
正社員採用とフリーランス採用は、対立するものではありません。どちらが優れているのかではなく、「どういう順序で関係を築くか」という設計の問題です。業務委託から始め、お互いを知り、信頼を積み上げた上で正社員として迎える——この流れは、採用の本質である「長く一緒に働ける仲間を見つけること」に、もっとも誠実に向き合ったアプローチだといえます。
一緒に働いてきたフリーランスエンジニアに対して「もっと深く関わってほしい」と感じたとき、それはすでに関係の土台ができているサインです。あとは、タイミングを見極め、相手のキャリアに寄り添った対話の場を設計するだけです。
優秀なエンジニアとの出会いは、正しい土俵を選ぶことから始まります。焦らず、誠実に、一歩ずつ関係を育てていきましょう。
この記事を書いた人
re:shine編集部
エンジニアと企業のより良いマッチングを目指し、採用成功に役立つ多彩なテーマを発信しています。深刻な人材不足や働き方の多様化など、変化の激しいエンジニア採用市場において、採用担当者の皆様に寄り添い、明日から活用できる情報をお届けします。
re:shineサービスサイトへ >








