
この記事はこんな人におすすめです
エンジニア採用でミスマッチが繰り返されているが、何が原因なのか特定できていない採用担当者の方
求人票の見直しやカジュアル面談の導入など対策を打っても改善しない、と感じている方
スキル面だけでなく、入社後の定着まで見据えた採用設計に課題を感じている方
「採用したエンジニアが数か月で退職した。」「スキルが実態と違っていた。」そのような経験を持つ採用担当者の方は多いのではないでしょうか。
エンジニア採用における「ミスマッチ」は、個人的な失敗ではなく業界全体に広がる課題です。問題は、対策を打っているはずなのに改善しない企業が多いことです。求人票を見直したり、カジュアル面談を始めたりしてもまたミスマッチが起きる。その繰り返しに疲弊している採用担当者は少なくありません。
この記事では、ミスマッチが繰り返される構造的な原因を解説し、採用設計を根本から見直すための具体的なアクションをお伝えします。読み終える頃には、自社のミスマッチがどこから来ているかを特定し、次に着手すべきことが明確になっているはずです。
- 1、エンジニア採用におけるミスマッチとは何か
- (1)スキルのミスマッチ—技術力・経験年数の認識ズレ
- (2)カルチャー・期待値のミスマッチ—定義されにくい「働き方のズレ」
- 2、エンジニア採用でミスマッチが起きる根本原因
- (1)採用要件の粒度と範囲が現場とずれている
- (2)情報開示が一方通行になっている—エンジニアが本当に知りたい情報とは
- (3)選考にエンジニアが関与していない—「丸投げ採用」が招くズレ
- 3、ミスマッチが繰り返される企業に共通する盲点
- (1)採用プロセスがエンジニアに「見られている」という意識が薄い
- (2)スカウト・求人票・面談でエンジニアが実際に見ているポイント
- 4、エンジニア採用のミスマッチを防ぐための具体的対策
- (1)採用要件を現場エンジニアと一緒に定義する
- (2)カジュアル面談を相互理解の場として設計する
- (3)入社後90日の成功条件を採用プロセスに組み込む
- 5、繰り返すミスマッチへの根本解決策:採用設計を見直す
- (1)フリーランス採用を「ミスマッチリスクを減らす検証手段」として活用する
- (2)入社後フォロー体制を採用設計の一部として考える
- 6、まとめ:採用設計を変えれば、ミスマッチは構造から断てる
1、エンジニア採用におけるミスマッチとは何か
まずミスマッチの意味を整理しておきます。エンジニア採用のミスマッチとは、「企業が求めるエンジニア像」と「実際に採用したエンジニア」の間に生じる認識のズレのことです。このズレは大きく2つに分類できます。
(1)スキルのミスマッチ—技術力・経験年数の認識ズレ
最も分かりやすいのがスキルのズレです。「React経験者を求めていたが、実際にはjQueryしか書いたことがない方だった」「5年以上の経験と書いてあったが、業務でその技術を使ったのは1年未満だった」といったケースが典型です。
スキルのズレが生じやすい背景には、採用担当者とエンジニアの間にある「言語の壁」があります。エンジニアが普段使う技術の文脈を知らないまま求人票を書いても、意図どおりの候補者には届きにくいものです。
採用要件が現実と乖離しているケースも、スキルのミスマッチを生む背景として見落とせません。現場の各担当者が「あれもできてほしい」「これも必要」と要件を積み上げた結果、実際の市場にはほとんど存在しない人物像が求人票に記載されることがあります。複数の言語・フレームワークへの精通に加え、設計・テスト・インフラまで一人でこなせる人材を正社員採用で求めようとすると、候補者の母数は極めて限られます。採用できたとしても、その要件を「自己申告」で満たしているに過ぎないケースでは、入社後のスキルギャップが顕在化しやすくなります。
(2)カルチャー・期待値のミスマッチ—定義されにくい「働き方のズレ」
スキル以上に見落とされやすいのが、カルチャーや期待値のズレです。「自律的に動いてほしいと伝えていたが、指示待ちの方だった」「スタートアップらしい動き方を求めていたが、大企業的な仕事の進め方だった」といったズレは、求人票に明記しにくい部分で起こります。
株式会社マイナビの「中途採用状況調査2025年版」(*1)によると、「やっぱり離職(懸念がありつつ採用→離職)」の要因として「仕事内容のミスマッチ(24.5%)」が最多であり、「社風・仕事文化とのミスマッチ(18.7%)」がその次に多いという結果が出ています。スキルだけでなく文化面でのすり合わせが、いかに重要かがわかります。
*1 参照:株式会社マイナビ「中途採用状況調査2025年版(2024年実績)」2025年3月
2、エンジニア採用でミスマッチが起きる根本原因

paiza株式会社の「採用ミスマッチに関する実態調査」(*2)では、ITエンジニアを採用する企業の72.6%でミスマッチが発生していることが明らかになっています。「採用要件を明確にしましょう」「情報開示を丁寧に」といった対策は、多くの記事で語られていますが、それでもミスマッチが繰り返される理由は、根本原因にアプローチできていないからです。ここでは3つの本質的な原因を取り上げます。
*2 参照:paiza株式会社「採用ミスマッチに関する実態調査」2026年2月
(1)採用要件の粒度と範囲が現場とずれている
採用担当者が現場のエンジニアに「どんな人が必要か」を聞き、そのまま求人票に転記することがあります。しかし、この転記プロセスで意味が変わってしまうことが少なくありません。
現場が「TypeScriptを使える人」と言ったとき、それは「業務で3年以上TypeScriptを書いてきた人」を指していることもあれば、「TypeScriptを学習中でも前向きに習得できる人」を指していることもあります。この違いを言語化しないまま求人票にしてしまうと、届く候補者の質がバラつきます。
例1)NG表現:「React・TypeScriptの経験者」
例2)OK表現:「TypeSctipt環境のReactやVueで、一般的なWebサイトでのフロントエンドの機能追加が可能な方」
採用要件の粒度が荒いと、候補者の自己申告に依存した選考になります。
また、要件の肥大化もミスマッチが起こりやすい根本原因になり得ます。肥大化しやすい背景には、採用要件の定義プロセスに構造的な問題があります。現場の複数メンバーから「あった方がよいスキル」を集約するだけでは、WANT(あれば望ましい)がそのままMUST(必須)として求人票に並んでしまうのです。採用担当者がその要件の優先順位を現場に確認しないまま進めると、「全条件を満たす候補者のみを通過させる」運用になりがちです。
結果として「書いてあることと実態が違った」というミスマッチが生まれます
(2)情報開示が一方通行になっている—エンジニアが本当に知りたい情報とは
多くの求人票や面談では、企業側が伝えたい情報(事業内容・成長性・福利厚生)は丁寧に伝えられる一方で、エンジニアが知りたい情報が後回しになっています。
エンジニアが企業を選ぶ際に重視するのは、「使っている技術スタック」「チーム構成と開発体制」「コードの品質やレビュー文化」「技術的な意思決定の裁量」といった、開発の実態に関する情報です。
これらは、採用担当者にとっては「伝える必要性を感じにくい情報」であることが多いです。しかし、エンジニア視点では、これらの情報こそが「本当にこの会社で働けるか」を判断する材料になっています。
情報開示が企業側の都合で設計されていると、選考を通じた相互理解が成立せず、入社後に「聞いていた話と違う」というミスマッチにつながります。
(3)選考にエンジニアが関与していない—「丸投げ採用」が招くズレ
「採用は人事の仕事」として現場エンジニアが選考に関与しない体制になっている企業では、ミスマッチが起きやすい傾向があります。
技術スキルの評価は、エンジニアでないと正確には判断できません。また、カルチャーフィットも、実際の開発現場を知るエンジニアが面談に関与することで、より具体的なすり合わせができます。
人事だけで選考が完結している場合、「スキル要件の翻訳ミス」と「カルチャー評価の欠如」の両方が同時に起きやすく、ミスマッチのリスクが高まります。
3、ミスマッチが繰り返される企業に共通する盲点
採用要件の定義や情報開示の問題は、企業内部だけの話ではありません。採用プロセスのあらゆる接点で、エンジニアは企業の技術リテラシーやカルチャーを見ています。自社の採用プロセスが「見られている」という意識を持てるかどうかが、ミスマッチを繰り返す企業とそうでない企業の分岐点になっていることが多いです。
(1)採用プロセスがエンジニアに「見られている」という意識が薄い
エンジニアは採用プロセスの各接点で、企業が信頼に値するかどうかを判断しています。以下は、不信感を生みやすい典型的な場面です。
スカウト時:技術スタックに関係ない経歴へのアプローチ、コピーアンドペーストのような定型文
求人票:「モダンな技術を使用」「最新技術を積極導入」といった曖昧な表現で具体性がない
面談時:技術的な質問に人事が答えられず、すべて「エンジニアに確認します」になる
これらは採用担当者が意図してやっていることではありません。しかしエンジニア側からは、「技術を理解していない会社だ」というシグナルとして読み取られます。2章で述べた採用要件の粒度の荒さや情報開示の不足は、こうした場面でエンジニアに敏感に察知されており、候補者の離脱や入社後の「こんなはずじゃなかった」という感情につながります。
(2)スカウト・求人票・面談でエンジニアが実際に見ているポイント
採用要件の定義が甘い企業や、情報開示が一方通行になっている企業は、エンジニアにとって「入社後のイメージが持てない会社」として映りやすいです。エンジニアが企業を選ぶ際に重視する情報は、以下のようなものです。
技術スタック:どの言語・フレームワークを使っているか、なぜその選択をしたか
開発体制:チームの人数・構成、エンジニアの裁量範囲、意思決定のスピード
コード品質:テストの有無、コードレビューの文化、技術的負債の状況
キャリアパス:入社後にどのようなプロジェクトに関われるか、スキルアップの機会
これらの情報をスカウト・求人票・面談の各接点で具体的に伝えられる企業は、候補者の信頼を得やすく、「自分がここで働くイメージ」を持ってもらえます。エンジニアが知りたい情報を先回りして開示できるかどうかが、ミスマッチの少ない採用への第一歩です。
4、エンジニア採用のミスマッチを防ぐための具体的対策
ここでは、根本原因に対応した3つの具体的なアクションを取り上げます。
(1)採用要件を現場エンジニアと一緒に定義する
採用要件の精度を上げるには、現場エンジニアとの共同作業が欠かせません。人事が単独で書いた要件と、現場エンジニアが内容を確認した要件では、候補者の質が大きく変わります。
まず取り組みたいのが、要件を「MUST(必須)」と「WANT(あれば望ましい)」に分けた上で、それぞれについて現場エンジニアにレビューしてもらう工程を設けることです。現場の言葉が採用担当者を介して求人票に転記される過程で意味がずれやすい以上、言語化の精度を上げるためにも現場との確認工程は不可欠です。このとき重要なのは、「この要件を満たさない場合、入社後に具体的にどの業務で支障が出るか」を現場に問うことです。その問いを通じて初めて、各要件の優先順位が明確になり、現実的な採用要件に落とし込まれます。
例1)現場ヒアリング時の質問:「この要件を満たさない場合、実際の業務で困る具体的な場面は?」
例2)MUST要件の検証:「このスキルがあれば、入社1か月目から担当できる業務はどれか?」
要件を具体化するほど、候補者とのすり合わせ精度が上がり、入社後のギャップが減ります。現場エンジニアの時間は貴重ですが、要件定義への1〜2時間の投資は、ミスマッチによる再採用コストに比べれば十分に見合います。
(2)カジュアル面談を相互理解の場として設計する
カジュアル面談は「会社をPRする場」ではなく、「お互いの実態を確認し合う場」として設計することが重要です。企業側が話すだけの時間にしてしまうと、エンジニア側の疑問や不安が解消されないまま選考が進みます。
paizaの調査(*2)でも、ミスマッチ防止策として60.0%の企業がカジュアル面談を実施しています。ただし、設計次第でその効果は大きく変わります。
前掲*2 参照:paiza株式会社「採用ミスマッチに関する実態調査」2026年2月
例1)冒頭5分:エンジニアが「今の転職活動で大事にしていること」を話せる場を作る
例2)中盤:現場エンジニアが参加し、開発の実態(技術的な判断事例・失敗談)を正直に話す
候補者に「この会社は透明性がある」と感じてもらえれば、選考への真剣度が上がり、入社後のギャップも減ります。
(3)入社後90日の成功条件を採用プロセスに組み込む
採用はオファー承諾で終わりではありません。入社後90日間に何を期待しているかを、選考プロセスの中で明示することがミスマッチ防止に直結します。
「入社3か月で担当してほしい業務」「最初のマイルストーン」を採用担当者と候補者が共有することで、期待値のズレを事前に解消できます。
例1)オファー面談時に提示:「入社30日目には〇〇のコードレビューに参加してもらい、60日目からは〇〇機能の担当を想定しています」
この情報を持って入社する候補者と、そうでない候補者とでは、入社後の定着率に差が出ます。「こんなはずじゃなかった」を防ぐ最も効果的な一手が、入社前の期待値の言語化です。

5、繰り返すミスマッチへの根本解決策:採用設計を見直す
個別の対策を積み重ねても改善しない場合は、段階を下げて採用設計そのものを見直してみましょう。
(1)フリーランス採用を「ミスマッチリスクを減らす検証手段」として活用する
正社員採用では、入社後に初めてミスマッチに気づくことが多くあります。一方、フリーランスとして一定期間協働してから正社員化するという「トランジション採用」のアプローチでは、実際の仕事を通じた相互理解が先に生まれます。
業務委託という形でまず一緒に働いてみることで、スキルの実態・開発スタイル・チームとの相性を確かめることができます。これは採用担当者にとって「ミスマッチを減らす検証の場」として機能します。
正社員採用市場の競争が激しい中で、フリーランス採用を組み合わせることで、採用の選択肢と精度を同時に高めることができます。
(2)入社後フォロー体制を採用設計の一部として考える
入社後のフォローを「現場任せ」にしている企業では、ミスマッチによる早期退職のリスクが高まります。入社後フォローは採用プロセスの延長として設計することが重要です。
入社前に期待値をすり合わせ、入社1か月・3か月のタイミングで採用担当者と面談を設けるという仕組みを持つ企業は、入社後の定着率が高い傾向があります。採用はオファーで終わらせず、活躍するまでの伴走を設計することが、長期的なミスマッチ防止につながります。

6、まとめ:採用設計を変えれば、ミスマッチは構造から断てる
エンジニア採用のミスマッチは、採用手法の問題ではなく、採用設計そのものの問題です。要件の粒度、情報開示の方向性、選考への現場関与など、これらが噛み合っていないまま対策を重ねても、根本原因にアプローチできていないため繰り返されます。
エンジニアは、専門性を持つひとりの職業人として企業を選んでいます。「採用してあげる」ではなく「一緒に仕事をする仲間を探している」という姿勢で設計された採用プロセスが、ミスマッチを減らす第一歩になります。
採用設計を根本から見直したい、あるいは正社員採用だけでなく新たな選択肢を検討したいとお考えの方は、フリーランス採用という手段も検討してみてください。re:shineでは、フリーランスから正社員転換を前提とした「トランジション採用」の仕組みを提供しています。
今日から取り組める一歩として、まず現場エンジニアと採用要件の見直しを始めてみてください。その小さな行動が、ミスマッチのない採用への確実な前進になります。
この記事を書いた人
re:shine編集部
エンジニアと企業のより良いマッチングを目指し、採用成功に役立つ多彩なテーマを発信しています。深刻な人材不足や働き方の多様化など、変化の激しいエンジニア採用市場において、採用担当者の皆様に寄り添い、明日から活用できる情報をお届けします。
re:shineサービスサイトへ >








