
この記事はこんな人におすすめです
テストも面接も回しているのに、採用の質が上がっている実感が持てない方
「とりあえずコーディングテストを入れた」が、何を測るべきかを言語化できていない方
テストだけに頼らないスキル見極めの選択肢を知りたい方
コーディングテストを導入したのに、優秀そうな候補者ほど辞退してしまうと感じている採用担当者の方も多いのではないでしょうか。
エンジニア採用は、他の職種と比べてスキルの見極めが難しいうえに、売り手市場が続いている環境下では候補者の選択肢も豊富です。採用テストを取り入れることは確かに有効な手段ですが、設計を誤るとかえって応募者の離脱を招く結果になりかねません。
この記事では、エンジニア採用におけるテストの種類と「何を測れて・何を測れないのか」という視点を軸に、設計で陥りやすい落とし穴、そしてテストだけに頼らないスキル見極めのアプローチまで実務に役立つ視点で解説します。読み終える頃には、自社の採用フェーズに合ったテストの位置づけが明確になり、次に取るべきアクションが見えてくるはずです。
- 1、エンジニア採用でテストが必要とされる理由
- (1)書類・面接だけでは見えないスキルの「解像度不足」
- (2)採用ミスマッチが生むコストとリスク
- 2、エンジニア採用で使われるテストの種類
- (1)コーディングテスト ─ 実務スキルを可視化する
- (2)適性検査(CAB・GAB・SPI)─ 論理思考・性格・適性を測る
- (3)テストの組み合わせ方と目的別の選び方
- (4)コーディングテストで「測れる能力」と「測れない能力」
- 3、テストを導入するメリットと見落とされがちなデメリット
- (1)メリット:評価の標準化・面接の深度向上
- (2)デメリット:優秀なエンジニアほどテストで離脱しやすい理由
- (3)エンジニア視点で見た「やってはいけないテスト設計」
- 4、エンジニア採用テストの設計で押さえるポイント
- (1)まず「自社が何を測りたいか」を定義する
- (2)テストの目的を「スクリーニング」か「深掘り」かで分ける
- (3)実務に即した課題設計で辞退率を下げる
- (4)現場エンジニアと人事が評価基準を共有する仕組み
- 5、テストだけに頼らないスキル見極めのアプローチ
- (1)カジュアル面談をスキル・姿勢の確認の場として活用する
- (2)フリーランス採用で実稼働を見てから正社員転換する方法
- (3)ポートフォリオ・GitHubを活用したスキル評価
- 6、まとめ:「何を測るか」の定義から始めるエンジニア採用テスト設計
1、エンジニア採用でテストが必要とされる理由

(1)書類・面接だけでは見えないスキルの「解像度不足」
エンジニアのスキルは、職務経歴書や面接だけで正確に把握することが難しい職種です。「〇〇言語の経験3年」という記載があっても、実際にコードを書く能力や設計力は人によって大きく異なります。
面接でも、技術的な知識を持たない人事担当者が一人で評価しようとすると、候補者の自己申告を鵜呑みにしてしまうケースが生まれます。そうした「スキルの解像度不足」が、採用後のミスマッチという問題を引き起こす大きな要因となっています。
採用テストは、このスキルの解像度不足を補う手段として機能します。テストの結果を現場エンジニアと人事が共有することで、候補者の実力について共通認識を持ちやすくなります。
(2)採用ミスマッチが生むコストとリスク
採用ミスマッチが発生した場合のコストは、思いのほか大きいです。エン・ジャパン株式会社の調査*によると、入社から半年以内の早期離職が発生した場合、企業の損失額は640万円にのぼるという結果が出ています。採用費・人件費・教育研修費といった直接コストに加え、機会損失や現場メンバーへの負荷まで含めると、実質的な影響はさらに広がります。
* 参考:エン・ジャパン株式会社「『早期離職』に関する実態調査」2025年8月
さらに、スキルに乖離があるエンジニアが現場に入ることで、既存メンバーのフォロー負担が増し、チーム全体の生産性にも影響が及びます。即戦力を求めているはずが、かえって現場の疲弊を招くという悪循環に陥りやすい状況です。
テストによるスキル確認は、こうした採用ミスマッチのリスクを事前に低減するための投資として考えることができます。
2、エンジニア採用で使われるテストの種類
(1)コーディングテスト ─ 実務スキルを可視化する
コーディングテストとは、選考の場でプログラムを実際に組んでもらうことで、書類や面接では見えにくいエンジニアの技術力を直接確かめる手法です。出題形式はアルゴリズムや論理パズルから、業務に近いシステム実装まで幅広く、企業の採用目的によってさまざまな設計が存在します。
確認できる主なポイントは、基本的なプログラムの構築力・論理的思考力・コードの可読性・曖昧な仕様に対する対応力などです。一方で、テスト環境に慣れていないエンジニアや、実務では優秀でもアルゴリズム問題が苦手なエンジニアにとっては、実力が正確に反映されにくい場合もあります。
(2)適性検査(CAB・GAB・SPI)─ 論理思考・性格・適性を測る
コーディングテスト以外にも、エンジニア採用では適性検査が用いられることがあります。代表的なものに、IT職向けに設計されたCAB・GABや、一般的に幅広く使われるSPIがあります。
CABはコンピュータ職・技術職向けに開発された検査で、暗算・法則性・命令表・暗号といった独特の問題構成が特徴です。論理的処理能力や情報処理の速度を測ることができます。GABはSEや技術営業職向けで、言語・計数・性格の構成になっています。性格診断テストは、候補者の仕事スタイルや協調性・ストレス耐性を把握するために活用され、カルチャーフィットや組織適合性の判断に役立ちます。
(3)テストの組み合わせ方と目的別の選び方
テストを単体で使うのではなく、採用フェーズや目的に応じて組み合わせることが効果的です。以下は、目的別の選び方の目安です。
【スクリーニング目的(応募数が多い場合)】
→ CAB・適性検査を書類選考後の早い段階で実施し、応募者を絞り込む
【スキル深堀り目的(面接前の精度向上)】
→ コーディングテストを面接前に実施し、面接では結果をもとに深堀り質問を行う
【カルチャー確認目的】
→ 性格診断テストを最終選考前に実施し、チームとの相性を判断する材料にする
採用規模が小さいスタートアップやベンチャーでは、すべてのテストを実施するのは現場負荷が大きくなります。まずはコーディングテストに絞り、評価基準と採点フローを整備してから他のテストを追加するという段階的な進め方が現実的です。
(4)コーディングテストで「測れる能力」と「測れない能力」
コーディングテストは有効なスキル確認の手段ですが、すべての能力を測れるわけではありません。「何が測れて・何が測れないのか」を理解することが、テスト設計の精度を上げるうえで欠かせない視点です。
コーディングテストで測れる能力と、測れない・測りにくい能力を整理すると、以下のようになります。
【測れる能力】
コードの記述力・正確性(指示通りに動くプログラムを書けるか)
論理的思考力・問題分解力(複雑な問いを整理して解けるか)
コードの可読性・設計の丁寧さ(読みやすく拡張しやすいコードを書けるか)
問題解決のアプローチ(仕様が曖昧なとき、どう対処するか)
【測れない・測りにくい能力】
実務でのコミュニケーション力(チームや顧客と円滑に仕事を進められるか)
チーム開発での立ち回り(レビューやペアプロでどう機能するか)
継続的な学習姿勢(技術の変化に自ら適応し続けられるか)
業務文脈への適応力(要件の背景を読んで判断できるか)
設計・アーキテクチャの判断力(中長期を見据えた構造を考えられるか)
「測れない能力」は、テストで代替できません。だからこそ、テスト設計の段階で「自社が本当に確認したいのはどちらの能力か」を明確にしておくことが重要です。そしてテストで測れない部分は、カジュアル面談・業務委託での実稼働・GitHubなど別の手段で補う設計が必要になります。
3、テストを導入するメリットと見落とされがちなデメリット
(1)メリット:評価の標準化・面接の深度向上
採用テストを導入することで得られる主なメリットは、評価基準の標準化と面接の質の向上です。
現場エンジニアによる採点が属人化していると、評価者によって合否の判断が揺れ、採用の一貫性が失われます。テストの採点基準を事前に言語化して共有することで、人事と現場が同じ軸でスキルを評価できるようになります。
また、テストの結果を面接の材料として活用することで、「このコードでこのアプローチを選んだ理由は?」という具体的な深掘り質問ができるようになります。簡単なスキル確認に面接の時間を使わず、候補者の思考プロセスや価値観を引き出す対話に集中できる点は、双方にとってメリットになります。
(2)デメリット:優秀なエンジニアほどテストで離脱しやすい理由
テスト導入に伴うリスクとして、多くの記事では「候補者の負担が増える」「採点に工数がかかる」という点が挙げられています。しかし、それ以上に見落とされがちな問題があります。それは、優秀なエンジニアほどテストの設計に敏感であるという点です。
経験豊富なエンジニアは、実務でどのようなスキルが求められるかを深く理解しています。そのため、実務との関連性が低いアルゴリズム問題や、過大な時間を要する課題に対して「この企業はエンジニアの働き方を理解していない」という印象を持ちやすいです。
売り手市場の現状において、候補者は複数の企業を同時に検討しています。テストの設計が候補者体験を損ねると、優秀な人材がテストの段階で離脱してしまう可能性があります。
(3)エンジニア視点で見た「やってはいけないテスト設計」
採用テストの設計で避けるべきNGパターンを、エンジニアの視点から整理します。
NGパターン①:実務と無関係なアルゴリズム問題を大量に出す
→ 「この問題が解けても、現場では全く役に立たない」という印象を与えやすい
自社の業務に使わないような高度なアルゴリズムを問う問題は、候補者との信頼関係を損ねます。
NGパターン②:回答に数時間〜丸1日を要する課題を設定する
→ 転職活動中のエンジニアは在職中であることが多く、物理的に参加できない
候補者の時間に対する敬意が感じられない課題は、志望度を下げる要因になります。
NGパターン③:採点基準を候補者に開示しない
→ 「何を評価されているかわからない」という不透明感が不信感につながる評価の全容を開示する必要はありませんが、「可読性を重視して評価します」「コードの正確性とアプローチの説明を見ます」といった観点レベルの情報を伝えるだけで、候補者の安心感は大きく変わります。
テストは「見極めの場」であると同時に、候補者にとって「企業文化を感じる場」でもあります。設計の質が企業の印象そのものに影響するという認識を持つことが重要です。
4、エンジニア採用テストの設計で押さえるポイント
(1)まず「自社が何を測りたいか」を定義する
テスト設計で最初にすべきことは、問題の難易度や形式を決める前に、「自社はこのエンジニアに何を期待しているのか」を言語化することです。
採用するポジション・フェーズ・チーム構成によって、優先すべき能力は異なります。たとえば、スタートアップの初期フェーズであれば、アルゴリズムの正確性よりも「仕様が不明確な状況でも前に進める力」や「ひとりで幅広い役割を担える適応力」が重要になる場合もあります。
定義のステップ例:
採用ポジションで「最初の3ヶ月に担ってほしい業務」を具体化する
その業務に必要な能力を「コーディングテストで測れるもの」と「測れないもの」に分類する
「測れないもの」をどの選考手段(面談・実稼働・GitHub確認等)で確認するかを決める
このステップを踏むことで、テストに何を期待し、何はテストに頼らないかという設計方針が明確になります。「テストで測れない能力」を事前に把握しておくことが、次の選考フローの設計にそのまま活きます。
(2)テストの目的を「スクリーニング」か「深掘り」かで分ける
テスト設計で次に決めるべきは、「何のためにこのテストを実施するのか」という目的の明確化です。スクリーニング目的と深掘り目的では、問題の難易度・分量・評価軸が大きく異なります。
スクリーニング目的であれば、短時間で一定のスキルレベルを確認できるシンプルな問題構成が適切です。一方、面接前の深掘り目的であれば、解答までの思考プロセスや設計の意図を確認できるような課題を設定します。
例)スクリーニング目的:制限時間30分・基本的な処理実装1問
例)深堀り目的:制限時間なし・機能実装1問+面接でのコードレビュー討議
(3)実務に即した課題設計で辞退率を下げる
テストの課題は、できる限り自社の実際の業務に近いものを設定することが重要です。実務と関係のない問題を課すと、候補者に「この会社での仕事のイメージが持てない」という印象を与えます。
たとえば、Webアプリを開発している会社であれば、API設計やデータ取得処理に関連した問題を出すことが自然です。採用後に実際に取り組む業務に近い課題設計は、候補者にとっても「入社後に何をするか」をイメージしやすくなるため、オファー承諾率の向上にもつながります。
良い課題設計の例:
・ 「ユーザー一覧を取得するREST APIのエンドポイントを実装してください(使用言語は自由)」
・ 「既存のコードにバグが含まれています。原因を特定して修正してください」※ 問題の難易度は「ストレッチすれば解ける」程度に設定するのが適切です。
(4)現場エンジニアと人事が評価基準を共有する仕組み
コーディングテストの採点は、技術的な判断を伴うため現場エンジニアやエンジニアリングマネージャーが担うのが基本です。しかし、採点担当者が変わるたびに評価軸が変わると、採用の一貫性が失われます。また、人事が採点結果を選考判断に活用するためには、「何をどう評価したのか」を人事が理解できる形で共有される必要があります。
そのために有効なのが、評価基準を事前に項目として言語化した評価シートの整備です。現場エンジニア・エンジニアリングマネージャー・人事の三者が事前にすり合わせて合意しておくことで、採点の属人化を防ぎ、選考判断を組織として一貫したものにできます。評価シートに含めるべき観点の例は以下の通りです。
評価観点の例(現場エンジニア・エンジニアリングマネージャーが採点):
コードの正確性(仕様通りに動くか)
可読性(変数名・関数分割・コメントの適切さ)
設計の妥当性(責務の分離・拡張性を意識しているか)
問題解決のアプローチ(面接での説明を踏まえた総合評価)
採点結果と評価コメントを人事と共有する際は、1〜3は現場エンジニアが技術的に判断し、4は面接同席のうえで現場エンジニアとエンジニアリングマネージャーが共同で評価するという役割分担を明確にしておくと、採用基準のブレをさらに小さくできます。

5、テストだけに頼らないスキル見極めのアプローチ
ここまで見てきた通り、コーディングテストで確認できる能力はコードの記述力・論理思考・可読性といった範囲にとどまります。実務でのコミュニケーション力・継続的な学習姿勢・チーム開発での立ち回りといった能力は、テストの場では自然に現れにくく、別の手段を組み合わせて確認する必要があります。ここでは、テストと併用できる3つのアプローチを紹介します。
(1)カジュアル面談をスキル・姿勢の確認の場として活用する
カジュアル面談は、正式な選考の前段として設ける対話の場です。候補者にとっては企業・仕事内容を知る機会であると同時に、企業側にとっても「テストでは測れない能力」を自然な会話のなかで確認できる貴重な接点になります。
たとえば、以下のような観点はカジュアル面談のほうが把握しやすいです。
技術的な興味の幅と深さ(どんな領域に自発的に関心を持っているか)
継続学習の姿勢(最近勉強していること・取り組んでいる個人プロジェクト等)
コミュニケーションのスタイル(情報の伝え方・質問の仕方・会話のテンポ)
カルチャーフィット(チームや仕事の進め方への価値観の合致)
カジュアル面談で「会話しやすい・思考の方向性が合う」という感触を得られた候補者に対してテストを案内するという順序にすることで、辞退率を下げながら選考の精度を上げることができます。また、カジュアル面談の段階からエンジニアが同席することで、技術的な視点からの見極めも自然に行えます。
(2)フリーランス採用で実稼働を見てから正社員転換する方法
正社員採用にこだわらず、フリーランスとして業務委託契約を結び、実際に一緒に働いてからスキルとカルチャー適合を確認するというアプローチが注目を集めています。
これは「トランジション採用」と呼ばれる考え方で、フリーランスエンジニアとのプロジェクト協働を通じて実稼働でのスキルを確認し、双方の合意のうえで正社員転換を検討するという流れです。テストでは見えにくいコミュニケーションスタイルや仕事の進め方も、実際の業務を通じて自然に把握できます。
フリーランス採用市場は正社員採用と比べて競争率が低く、テストで足切りをしなくても実力のある候補者と出会いやすい土俵でもあります。特に、採用テストの準備や運用に人的リソースをかけられないスタートアップにとっては、現実的な選択肢の一つです。
(3)ポートフォリオ・GitHubを活用したスキル評価
エンジニアが公開しているGitHubリポジトリや個人プロジェクト(ポートフォリオ)を事前に確認することも、テストなしでスキルを把握する有効なアプローチです。
GitHubのコードを見ることで、実際に書いているコードのスタイルや、OSS活動の有無、継続的にアウトプットしているかどうかといった情報が得られます。テストとは異なり、日常的な仕事ぶりに近いアウトプットを確認できる点が大きな利点です。
確認するポイントの例:
コードのコミット頻度と継続性
READMEの丁寧さ(ドキュメントへの意識)
テストコードが書かれているか
OSSへの貢献やissue対応の有無
ポートフォリオやGitHubの確認は、スカウト送信の前段階で取り入れると、候補者の具体的な成果物に触れたうえでメッセージを作成できるため、関心の高さが伝わりやすくなります。

6、まとめ:「何を測るか」の定義から始めるエンジニア採用テスト設計
エンジニア採用においてテストは有効な手段ですが、「テストを入れるかどうか」以前に、「何のためにどんなテストを設計するか」という視点が重要です。
コーディングテストで測れる能力には限界があります。コードの記述力や論理思考は確認できる一方で、チームでの立ち回り・継続学習の姿勢・業務文脈への適応力といった能力は、テストだけでは見えてきません。こうした「測れない能力」を補う手段として、カジュアル面談・トランジション採用・GitHubの確認を組み合わせることが、これからのエンジニア採用に求められる設計です。
re:shineでは、フリーランスエンジニアとの直接契約・トランジション採用を支援しており、テストなしで実稼働確認から採用につなげる選択肢を提供しています。

自社に合ったスキル見極めの方法を一つずつ整備することで、採用の質は着実に高まっていきます。まずは「自社が本当に確認したい能力は何か」を定義するところから始めてみてください。
この記事を書いた人
re:shine編集部
エンジニアと企業のより良いマッチングを目指し、採用成功に役立つ多彩なテーマを発信しています。深刻な人材不足や働き方の多様化など、変化の激しいエンジニア採用市場において、採用担当者の皆様に寄り添い、明日から活用できる情報をお届けします。
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