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フリーランスエンジニア採用後のオンボーディングでつまずく理由

フリーランスエンジニア採用後のオンボーディングでつまずく理由

業務委託で活躍していたエンジニアを、いざ正社員として迎えたところ、どこか距離を感じてしまうという声も聞かれます。研修や開発環境の整備は済んでいるのに、なぜかチームに馴染んでもらえない。そんな戸惑いを抱える採用担当者も多いのではないでしょうか。この記事では、フリーランス出身エンジニアに特有の心理的なギャップを踏まえたオンボーディング設計について解説します。弊社re:shineがトランジション採用の現場で見てきた知見を凝縮しました。読み終える頃には、自社のオンボーディング設計を見直すべき点が明確になっているはずです。

トランジション採用実践ガイド

1、エンジニア採用後のオンボーディングでつまずく企業が増えている理由

エンジニア採用後のオンボーディングでつまずく企業が増えている理由

(1)研修やツール整備だけでは定着しない現場の声

新しく入社したエンジニアのために、研修資料を用意し、開発環境も事前にセットアップしておいたにもかかわらず、なかなかチームに馴染んでもらえない。こうした声は、採用担当者からたびたび聞かれます。原因の一つとして、業務委託を経て正社員になったエンジニアであるケースがあります。業務上のスキルには何の問題もなく、契約形態が変わっただけのはずなのに、心理的な距離が縮まらないという現象が起きています。

こうした企業の多くは、オンボーディングの設計自体を怠っているわけではありません。むしろ、新卒や一般的な中途採用者を想定した丁寧な受け入れフローを整えています。それでもうまくいかない背景には、想定している「新しく組織に加わる人物像」と、実際に迎えるフリーランス出身エンジニアの働き方や価値観との間に、見えにくいずれが存在していることが考えられます。

(2)背景にあるフリーランス出身エンジニアの増加

株式会社マイナビの調査によると、フリーランスとしての働き方の満足度は「私生活との両立」(65.7%)や「仕事内容」(64.3%)で特に高く、業務選択の裁量や自由度を重視する傾向がうかがえます(*1)。こうした働き方を選ぶ人材の母数自体も拡大しています。INSTANTROOM株式会社の調査によると、ITフリーランス人口は2024年に約35.3万人(前年比107.1%)に拡大しており、2028年には45万人を突破し、国内IT人材の40%を占めると推計されています(*2)。裁量を軸に働き方を選んできた層が、業務委託を経て正社員へと転じる、いわゆるトランジション採用は今後も広がっていくと見られます。この流れの中で、フリーランス出身者ならではの受け入れ方を検討する必要性が高まっているといえます。

*1 参考:株式会社マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査2025年版」2025年10月

*2 参考:INSTANTROOM株式会社「ITフリーランス及びフリーランスエージェント市場白書2025」2025年4月

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2、フリーランス出身エンジニアに特有の心理的なギャップ

(1)「自律性への慣れ」が組織適応のスピードを左右する

業務委託の働き方では、依頼された成果物を自分の裁量で仕上げていくことが基本になります。誰かの指示を細かく仰ぐ機会は少なく、自分で判断し、自分で進める習慣が身についています。この自律性は本来強みですが、組織の一員として動く場面では、報告や相談のタイミングを掴みにくくするという副作用も生みます。複数のクライアントを掛け持ちしてきたエンジニアであれば、なおのこと「まず自分で完結させる」動き方が染みついている場合があります。

例1)チームの朝会で進捗を共有する文化に馴染むまで時間がかかり、「勝手に進めている」という印象を周囲に与えてしまう。

例2)困りごとを抱えても「自分で解決すべき」という感覚が抜けず、相談のタイミングを逃してしまう。

上記のような場面は、本人の協調性の欠如ではなく、働き方の違いから生じる自然なギャップだと捉える必要があります。

(2)「帰属意識の薄さ」が生む距離感

複数のクライアントを掛け持ちしながら働いてきたエンジニアにとって、ひとつの組織に深く帰属するという感覚は、必ずしも当たり前ではありません。案件ごとに関わる企業が変わる働き方を続けてきた結果、「この会社の一員である」という意識が育つまでに時間がかかる場合があります。正社員という契約形態になったからといって、帰属意識がすぐに芽生えるわけではない点を、受け入れ側が理解しておくことが欠かせません。この距離感を「協調性の低さ」と誤って評価してしまうと、本人との間に無用な溝を生みかねません。

(3)正社員転換が「対話」ではなく「手続き」で終わっていないか

契約書の切り替えや給与体系の変更といった事務手続きが完了すると、正社員化が完了したと捉えてしまう企業も見受けられます。しかし、本人の側では、働き方や評価のされ方、周囲との関わり方など、目に見えない部分の変化に戸惑っているケースが少なくありません。手続きの完了と、心理的な移行の完了は、必ずしも同時に訪れないと考えておくべきでしょう。正社員化のタイミングこそ、あらためて本人と向き合う対話の機会として設計し直す発想が求められます。

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フリーランス出身エンジニアに特有の心理的なギャップを三つ並べた図

3、一般的なオンボーディング施策が見落としているポイント

(1)研修・ツール設定だけでは埋まらない心理的なギャップ

多くのオンボーディング施策は、開発環境のセットアップやツールの使い方、社内ルールの説明といった、業務を進めるための情報提供に重点を置いています。これらは新しく加わったメンバー全般に必要な取り組みであり、否定されるものではありません。ただし、フリーランス出身者が抱える自律性への慣れや帰属意識の薄さといった心理面のギャップは、情報提供だけでは埋まりにくいという特徴があります。研修プログラムを何度見直しても改善しないと感じる場合、そもそも対象としているギャップの種類が違っている可能性を疑ってみる価値があります。

(2)組織社会化という視点からオンボーディングを捉え直す

人事領域の研究では、新しく組織に加わった人が必要な知識や行動様式を身につけていくプロセスを「組織社会化」と呼びます。株式会社リクルートマネジメントソリューションズの解説によると、組織社会化は個人の努力任せにするより、企業側が制度として体系的に働きかける「制度的戦術」のほうが効果を発揮しやすいとされています(*3)。フリーランス出身エンジニアのオンボーディングにおいても、現場の対応をメンター個人に委ねるのではなく、組織としての仕組みに落とし込む視点が求められます。属人的な対応に頼ってしまうと、担当者が変わるたびに受け入れの質にばらつきが生じ、再現性のあるオンボーディングにはなりません。

*3参考: 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ「組織社会化とは?新入社員が組織の一員になるプロセスを解説」2025年1月

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一般的なオンボーディング施策で見落とされがちな4つのポイントを整理した図

4、フリーランス出身エンジニアに合わせたオンボーディング設計の実践ポイント

(1)自律性を尊重しながらチームとの接点をつくる

自律的に動く力を削がずに、チームとの接点を意図的に用意することが重要です。指示を増やすのではなく、関わる機会を増やす発想への転換が求められます。

例1)タスクの進め方は本人の裁量に任せつつ、進捗共有の場だけは固定の頻度で設ける。

例2)技術選定の議論に早い段階から巻き込み、意見を求める機会をつくる。

裁量を尊重されていると感じながら、自然にチームとの接点が増えていく設計が、自律性と協調性を両立させる鍵になります。

(2)帰属意識は急がず段階的に育てる

歓迎会や懇親会のような一度きりのイベントで帰属意識が芽生えることは、あまり期待できません。日々の小さな接点を積み重ねる設計のほうが効果的です。

例1)入社直後の1か月は、業務外の雑談ができる1on1の頻度を通常より高めに設定する。

例2)過去に関わった案件やプロダクトへの思い入れを聞く機会を設け、キャリアの連続性を意識してもらう。

急いで一体感を求めるのではなく、時間をかけて関係を育てる姿勢が大切です。

(3)評価・フィードバックの仕組みを事前にすり合わせる

業務委託時代は、成果物に対する評価が主でした。正社員になると、プロセスやチームへの貢献度といった、見えにくい観点が評価に加わることが一般的です。このギャップを事前に説明しておかないと、評価に対する不信感につながりかねません。転換のタイミングで、評価の観点がどう変わるのかを具体的にすり合わせておく必要があります。

例1)正社員化の面談で、評価項目の変化を成果物の質だけでなくチームへの貢献度を含む形で明示する。

例2)試用期間中に一度中間フィードバックの場を設け、評価のズレを早期に修正できるようにする。

5、トランジション採用を成功に導くオンボーディングの考え方

(1)業務委託期間からオンボーディングはすでに始まっている

正社員化の瞬間からオンボーディングが始まると考えると、対応が後手に回りがちです。業務委託として関わっている段階から、少しずつ組織との接点を増やしていくことが、転換後の摩擦を減らすことにつながります。例えば、業務委託の期間中から社内の勉強会や雑談チャンネルに招くなど、小さな接点を積み重ねておくことも有効です。

(2)正社員転換後も「対話」を継続する設計にする

正社員化を最終ゴールとして捉えるのではなく、その後も対話を続ける前提で設計することが望ましいといえます。re:shineでは、業務委託期間中の関わりから正社員化後の定着まで、企業とエンジニアの対話を軸にしたトランジション採用の仕組みを整えております。契約形態の変更で終わらせず、関係を続けていく視点が、長期的な定着につながります。

6、まとめ:手続きの完了ではなく対話の継続を設計する

エンジニア採用後のオンボーディングは、業務手順を教える取り組みだと捉えられがちです。しかし、フリーランス出身者を迎える場面では、自律性への慣れや帰属意識の薄さという、目に見えにくい心理的な変化にも向き合う必要があります。手続きの完了をゴールにせず、対話を重ねながら関係を育てていく姿勢こそが、オンボーディング設計の本質だといえるでしょう。フリーランス出身エンジニアと向き合う採用担当者の皆さまの取り組みを、心から応援しています。

この記事を書いた人

re:shine編集部

エンジニアと企業のより良いマッチングを目指し、採用成功に役立つ多彩なテーマを発信しています。深刻な人材不足や働き方の多様化など、変化の激しいエンジニア採用市場において、採用担当者の皆様に寄り添い、明日から活用できる情報をお届けします。

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