
「正社員採用の応募がなかなか集まらない」「採用してみたものの、すぐに離職してしまった」と頭を抱えている方も多いのではないでしょうか。
エンジニア採用市場は依然として売り手優位の状況が続いており、従来の採用手法だけで戦い続けることに限界を感じている採用担当者の声は増えています。そうした状況の中で、業務委託を起点に実務で相互理解を深め、正社員へ移行する「トランジション採用」が着実に広がりを見せています。
この記事では、トランジション採用の仕組みと背景を整理したうえで、自社に向いているかどうかを判断するための診断項目を提供します。「使えそう」で止まっている方に、次の一歩を踏み出す材料を届けられれば幸いです。

- 1、トランジション採用とは何か——基本の仕組みをおさらいする
- (1)トランジション採用は業務委託から正社員へ、段階的に関係を築く採用手法
- (2)従来の正社員採用・派遣とトランジション採用の違い
- 2、なぜ今トランジション採用が広がっているのか
- (1)正社員採用が抱える3つの問題点
- (2)トランジション採用のフィットまでにもう一歩な企業・ケースの特徴
- 3、トランジション採用は自社に合っているか
- (1)トランジション採用がフィットしやすい企業・ケースの特徴
- (2)トランジション採用のフィットまでにもう一歩企業・ケースの特徴
- (3)確認結果の受け止め方——どちらの場合もトランジション採用に進める
- 4、まとめ:トランジション採用で、エンジニア採用は「選ぶ」から「確かめ合う」時代へ
1、トランジション採用とは何か——基本の仕組みをおさらいする

(1)トランジション採用は業務委託から正社員へ、段階的に関係を築く採用手法
トランジション採用とは、フリーランスや副業人材に業務委託として関わってもらい、実務を通じて相互理解を深めたうえで正社員へ移行する採用手法です。英語の「transition(移行・転換)」が示すとおり、雇用形態を一気に変えるのではなく、段階的に関係を築いていくところに特徴があります。
流れを整理すると、まず業務委託として特定の業務やプロジェクトに携わってもらいます。その期間中に、スキルの確認だけでなく、チームとの相性・コミュニケーションスタイル・仕事への姿勢といった面接では見えにくい部分を互いに確かめ合います。双方が合意したタイミングで正社員転換を進めるのがトランジション採用の基本設計です。
重要なのは、この期間が「試用」ではなく「相互理解のための協働」であるという点です。企業が一方的に評価するのではなく、エンジニア側も企業の文化や働き方を見極める機会として捉えています。「未知の人材を採用する」のではなく、「一緒に手を動かしてきた仲間を正式に迎え入れる」という感覚に近いといえるでしょう。
(2)従来の正社員採用・派遣とトランジション採用の違い
トランジション採用の特徴は、従来の採用手法と比較するとより鮮明になります。
従来の正社員採用 | 派遣 | トランジション採用 | |
雇用形態 | 最初から正社員 | 派遣社員(直接雇用なし) | 業務委託→正社員 |
見極め期間 | 面接のみ(数時間〜数日) | 就業期間中(直接雇用不可) | 実務を通じた相互理解(数週間〜数ヶ月) |
ミスマッチリスク | 高い(入社後に判明) | 中程度 | 低い(実務で相互確認済み) |
正社員転換 | 採用時点で確定 | 原則不可(紹介予定派遣除く) | 双方合意のうえで転換 |
コスト構造 | 採用時費用一括発生 | 派遣会社手数料が継続発生 | 転換費用−業務委託費のみ(転換コストは低い)※re:shineの場合 |
従来の正社員採用は、書類選考・面接という限られた接点だけで合否を判断します。入社後に「思っていた仕事と違う」「チームの雰囲気が合わない」というミスマッチが生じやすく、早期離職の一因になりがちです。
派遣は就業期間中に業務適性を見極められる点では共通していますが、労働者派遣法の制約上、直接雇用への切り替えには手続きが必要です。また派遣会社への手数料が継続発生するコスト面の課題も残ります。トランジション採用は、実務を通じた相互理解という良さを活かしながら、業務委託という柔軟な形態で直接関係を築き、自然なタイミングで正社員転換を行える点が異なります。
関連記事▶︎エンジニア採用のミスマッチが繰り返される本当の理由
2、なぜ今トランジション採用が広がっているのか
(1)正社員採用が抱える3つの問題点
従来の正社員採用には、手法として構造的な限界があります。以下の3点は、多くの採用担当者が繰り返し直面している問題です。
問題点① 面接だけでは見極められない
書類選考と数回の面接という限られた接点で、スキル・人柄・カルチャーフィットのすべてを判断するのは構造的に難しいことです。どれだけ採用担当者が熟練していても、実務での立ち振る舞いや、チームとの相性は「一緒に働いてみないとわからない」部分が必ず残ります。
問題点② ミスマッチ・早期離職が繰り返される
見極めの限界は、入社後のミスマッチとして顕在化します。「思っていた仕事と違う」「職場の雰囲気が合わなかった」という理由による早期離職が生じるリスクを、採用担当者は抱えがちです。ミスマッチが起きるたびに採用工数がリセットされ、同じプロセスを繰り返す悪循環は、採用チームにとって時間を消耗する大きな問題です。
問題点③ 採用コストが一括でかかる
正社員採用では、エージェント手数料を含めると一人あたり数十〜百万円規模のコストが採用時点で一括発生します。入社後に早期離職が起きた場合、そのコストは回収されないまま次の採用サイクルが始まります。「採用してみないとわからない」という不確実性の高さと、コスト負担の重さが組み合わさることで、採用担当者のリスクは二重になっています。
トランジション採用は、こうした正社員採用の設計上の欠陥を実務的に回避する方法のひとつとして広がっています。

(2)トランジション採用のフィットまでにもう一歩な企業・ケースの特徴
トランジション採用が現実的な選択肢になってきた背景には、アプローチできる人材層の拡大もあります。総務省の調査では、本業をフリーランスとする人は209万人、副業を含めた合計では約257万人にのぼるとされています(*1)。働き方改革による副業解禁や、コロナ禍でのリモートワーク定着を経て、独立・フリーランス化する人材は増加傾向が続いています。
また、2024年11月にはフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が施行され、フリーランスの就業環境が法的に整備されました(*2)。これにより、フリーランスという働き方への社会的な信頼度が高まり、スキルある人材がより安心してフリーランスとして活動できる環境が生まれています。
企業にとってこれが意味するのは、正社員採用の競争に参加しなくても、業務委託という入口から優秀なエンジニアと接点を持てる機会が構造的に広がっているということです。トランジション採用は、こうした市場変化を採用設計として活かす手法と言えます。
*1参考:総務省統計局「令和4年就業構造基本調査 結果の要約」2023年7月
*2参考:公正取引委員会・中小企業庁 「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」2024年11月施行
関連記事▶︎フリーランスエンジニア採用を戦略的に使う方法と進め方
3、トランジション採用は自社に合っているか
ここからは、トランジション採用が自社の課題・状況に合っているかを診断できる項目を整理しました。採用担当者自身が判断する際の目安として活用してください。
(1)トランジション採用がフィットしやすい企業・ケースの特徴
以下の項目に多く当てはまるほど、トランジション採用との親和性が高いと言えます。
正社員採用の応募が少なく、採用競争で勝ちにくいと感じている
採用後のミスマッチ・早期離職が繰り返されている
スキル要件は明確だが、カルチャーフィットや相性をどう見極めるか悩んでいる
即戦力が必要で、1〜2ヶ月の教育・オンボーディングにリソースを割く余裕がない
中長期での正社員化を想定しており、まず実務で相性を確かめてから関係を深めたい
エンジニアと直接コミュニケーションを取れる体制(現場リード・EMなど)が整っている
採用にかけられる費用を抑えながら、質の高い人材と出会いたい
特に「ミスマッチ・早期離職が繰り返されている」「カルチャーフィットの見極めが難しい」という課題を持つ企業にとっては、実務を通じた相互理解というトランジション採用の本質的なメリットが直接機能します。

(2)トランジション採用のフィットまでにもう一歩企業・ケースの特徴
以下に当てはまる場合は、導入前に体制を整えたり、他の採用手法を優先したりすることを検討してください。
エンジニアとのコミュニケーションを担当できる人材(現場リード・EM)が不在
単発の作業発注で完結させたい業務内容で、継続的な関わりが生まれにくい
正社員への転換を判断する決裁権限や予算枠が現場になく、意思決定に時間がかかりやすい
業務委託の経験や導入目的にかかわらず、トランジション採用は多くの企業で始められます。ただし、実務を通じた相互理解に時間をかける前提がなければ、正社員転換までは至りにくいのが実情です。
(3)確認結果の受け止め方——どちらの場合もトランジション採用に進める
「(1)相性が良さそうな企業の特徴」に多く当てはまった方は、具体的な検討フェーズに進むタイミングかもしれません。どのような業務でフリーランスエンジニアと関わるか、業務委託期間をどう設計するかが次のステップになります。
「(2)今はまだ早いかもしれない企業の特徴」に複数当てはまった方も、導入をあきらめる必要はありません。担当者を決める、決裁の流れを整理するなど、体制を先に整えれば、段階的に導入できるケースがほとんどです。
関連記事▶︎フリーランスエンジニアを正社員採用に転換する方法と3つのサイン
4、まとめ:トランジション採用で、エンジニア採用は「選ぶ」から「確かめ合う」時代へ
トランジション採用は、単に「フリーランスを正社員にする手法」ではありません。「書類と面接だけで人を見極め、入社後にどう馴染むかは始まってみないと分からない」という従来の設計から、「ともに働きながら互いを理解し、双方が納得したうえで関係を深める」という採用設計への転換と言えます。
エンジニア採用の競争が激しい今の市場では、全員が同じ土俵で争い続けることに限界があります。正社員採用の応募が集まらない、ミスマッチが繰り返されるという状況に心当たりがある場合、まずは「今いる土俵を疑う」ことが突破口になるかもしれません。
re:shineでは、フリーランスエンジニアと企業が直接つながるプラットフォームとして、業務委託からのトランジション採用を低コストで設計できる仕組みを提供しています。採用設計の見直しを考えている方は、一度サービス内容を確認してみてください。
「知っている」から「使える」へ。この記事が、その一歩を踏み出す材料になれば幸いです。
この記事を書いた人
re:shine編集部
エンジニアと企業のより良いマッチングを目指し、採用成功に役立つ多彩なテーマを発信しています。深刻な人材不足や働き方の多様化など、変化の激しいエンジニア採用市場において、採用担当者の皆様に寄り添い、明日から活用できる情報をお届けします。
re:shineサービスサイトへ >









