
「リファラル採用を導入したのに、思ったより定着率が上がらない」と感じている採用担当者の方も多いのではないでしょうか。リファラル採用は定着率が高いとよく言われます。しかし、その理由を「紹介者がフィルターになるから」という説明で終わらせていると、採用設計の本質を見落とすことになります。
定着率を左右するのは、採用手法そのものではありません。入社前に企業とエンジニアがどれだけ互いを理解できているか——その「相互理解の深さ」が、定着を決定づける本質的な要因です。この視点に立つと、リファラル(知人紹介)からフリーランス採用、そしてトランジション採用へと、相互理解が段階的に深まっていく構造が見えてきます。
この記事では、リファラル採用が定着率を高めるメカニズムを「相互理解の深度モデル」として構造的に解説します。読み終えたころには、自社の採用設計のどこに問題があるかを言語化でき、次に取るべき一歩が明確になるはずです。
- 1、リファラル採用が定着率を高める理由——よく聞く説明の「その先」
- (1)定着率データで見るリファラル採用の優位性
- (2)「紹介者がフィルターになるから」だけでは説明できないこと
- 2、定着率を本当に決めているのは「相互理解の深さ」だった
- (1)なぜ相互理解が浅いと人は辞めるのか——ミスマッチの構造
- (2)相互理解を深める3つの要素——情報・体験・信頼
- 3、相互理解の深度モデル——リファラル採用からトランジション採用へ
- (1)リファラル採用——知人紹介が生む「事前の信頼と情報」
- (2)フリーランス採用——「実際に一緒に働く」ことで深まる相互理解
- (3)トランジション採用——双方向の見極め期間という最深モデル
- 4、相互理解の深度を上げる採用設計の実践
- (1)リファラル採用を機能させる「情報設計」の考え方
- (2)相互理解をさらに深めたいときにフリーランス採用が有効な理由
- (3)採用手法を組み合わせた設計アプローチ
- 5、まとめ:定着率は「手法」ではなく「理解し合う設計」で決まる
1、リファラル採用が定着率を高める理由——よく聞く説明の「その先」

(1)定着率データで見るリファラル採用の優位性
まず、リファラル採用の定着率に関するデータを確認しておきます。商工中金が実施した「中小企業の人材確保に関する調査」(*1)によると、最も人材の定着に役立った採用手法としてリファラル採用を挙げた企業が35.9%で最多、人材紹介エージェントの23.3%を上回っています。また、株式会社ウィルオブ・パートナーが採用担当者を対象に実施した調査(*2)では、1年後定着率が90%以上の割合はリファラル採用経由が26.9%と最多で、採用媒体経由の11.5%を大幅に上回る結果となっています。数字の水準は調査によって異なりますが、リファラル採用が他の採用手法と比べて定着率において優位にある傾向は、複数のデータが一貫して示しています。
*1 参考:株式会社商工組合中央金庫「中小企業の人材確保に関する調査」2024年5月 https://www.shokochukin.co.jp/report/data/assets/pdf/futai202401.pdf
*2 参考:株式会社ウィルオブ・パートナー「リファラル採用に関するアンケート調査」2025年11月https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000369.000034777.html
(2)「紹介者がフィルターになるから」だけでは説明できないこと
リファラル採用が定着率を高める理由として最もよく挙げられる説明が、「紹介者が事前にフィルタリングしてくれるから」というものです。知人を紹介する社員は、その人が企業カルチャーに合うかどうかをある程度判断したうえで紹介します。このフィルター機能が、採用ミスマッチを減らすという論理です。
確かにこの説明は一定の正しさを持っています。しかし、この説明だけでは腑に落ちない点が残ります。たとえば、リファラル制度を導入しても定着率が思うように上がらない企業が存在するのはなぜでしょうか。
「紹介者フィルター説」は定着率向上の一部分を説明しているにすぎません。定着率を本当に決めているのは、もっと根本的なところにあります。次章で、その本質に迫ります。
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2、定着率を本当に決めているのは「相互理解の深さ」だった
(1)なぜ相互理解が浅いと人は辞めるのか——ミスマッチの構造
採用後の早期離職の主な原因は、入社前のイメージと入社後の現実のギャップです。仕事の内容や職場の雰囲気、求められる役割などが事前に思い描いていたものと異なると、働き続けることへの意欲が急速に失われます。これを「リアリティ・ショック」と呼びます。
リアリティ・ショックが起きる根本的な原因は、採用プロセスにおける情報の非対称性にあります。企業側は採用を成功させたいあまり、自社の魅力だけを伝えがちです。一方でエンジニア側も、選考を通過したいという心理から、ありのままの自分を見せることを躊躇する場合があります。こうした相互理解の浅さが、ミスマッチを生み、定着率を下げる構造的な要因となっています。
逆に言えば、入社前に企業とエンジニアが互いの実態を深く理解し合えていれば、入社後のギャップは生まれにくくなります。定着率を高めるための本質的なアプローチは、この「相互理解の深さ」をいかに採用プロセスで実現するかにあるのです。
(2)相互理解を深める3つの要素——情報・体験・信頼
では、「相互理解の深さ」とは具体的に何で構成されているのでしょうか。採用プロセスにおける相互理解は、次の3つの要素から成り立っています。
情報:企業とエンジニアが互いについて知っていること。仕事内容・カルチャー・働き方・課題・スキル・価値観など。
体験:実際に一緒に働くことで得られる生きた感覚。業務の進め方・チームの雰囲気・コミュニケーションスタイルなど、言葉では伝わりにくいものを体験から理解すること。
信頼:情報と体験を積み重ねることで生まれる、互いへの信頼感。「この会社なら安心して働ける」「このエンジニアなら長く活躍してくれる」という確信。
この3つの要素が揃うほど相互理解は深まり、入社後のミスマッチが起きにくくなります。重要なのは、採用手法によってこの3要素の充足度が大きく異なるという点です。次のセクションで、採用手法ごとの相互理解深度を比較します。

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3、相互理解の深度モデル——リファラル採用からトランジション採用へ
ここでは、相互理解の3要素(情報・体験・信頼)という観点から、リファラル(知人紹介)→フリーランス採用→トランジション採用という連続モデルを整理します。この3つは「採用手法の優劣」ではなく、「相互理解が深まっていくプロセスのスペクトラム」として理解してください。
(1)リファラル採用——知人紹介が生む「事前の信頼と情報」
リファラル採用とは、現職の社員が知人・友人を候補者として企業に紹介するという採用モデルのことです。この「知人紹介」という関係性が、相互理解の観点でどのような価値を持つかを整理します。
まず「情報」の面では、紹介者を通じて候補者は入社前から会社のリアルな情報を得られます。求人票や面接では伝わりにくい職場の雰囲気・チームの人間関係・日常の仕事の進め方などを、信頼できる知人から聞けることが大きな強みです。企業側も同様に、紹介者を通じて候補者の人柄・スキル・働き方の特性をある程度把握できます。
次に「信頼」の面では、知人が紹介しているという事実自体が、候補者にとって「この会社は信頼できる」という安心感の根拠になります。見知らぬ求人からエントリーするよりも、すでに信頼関係のある人からの紹介のほうが、入社後の心理的安全性が高まりやすいといえます。
一方で、「体験」の要素は通常の採用プロセスと同様に、入社前には充足されません。リファラルが提供するのは主に「情報と信頼の先行提供」であり、実際に働いてみないとわからない側面は残ります。これがリファラルにおける相互理解の限界です。
(2)フリーランス採用——「実際に一緒に働く」ことで深まる相互理解
フリーランス採用とは、正社員化を前提とせず、業務委託契約でエンジニアと実際に一緒に働くアプローチです。リファラル採用が「情報と信頼」を先行提供するのに対し、フリーランス採用は「体験」という相互理解の要素を、実際に働きながら得られる点で異なります。
プロジェクトをともに進める中で、企業はエンジニアの技術力だけでなく、コミュニケーションスタイル・問題解決のアプローチ・チームへのフィット感をリアルに確認できます。エンジニア側も、会社の意思決定の速さ・現場の雰囲気・業務の実態を体験として知ることができます。
実際に働く期間を通じて情報・体験・信頼の3要素が積み重なります。一方で、業務委託契約である以上、正社員として迎えるには改めて採用プロセスが必要になります。この点がフリーランス採用と、次に紹介するトランジション採用との分岐点になります。
(3)トランジション採用——双方向の見極め期間という最深モデル
トランジション採用とは、フリーランスとして一緒に働きながら、将来的な正社員転換を視野に入れた採用モデルです。フリーランス採用が「実際に働く体験」を提供するのに対し、トランジション採用はそこにさらに「正社員転換を双方で検討する期間」という構造を加えます。
このモデルの最大の特徴は、企業とエンジニアの双方が対等に相手を見極められる点にあります。企業側は「実務での活躍度合い」「チームへの貢献」「正社員として長く働いてもらえるか」を判断できます。エンジニア側は「この会社のミッションに共感できるか」「長期的なキャリアを描けるか」「働き方が自分に合っているか」を体験から判断できます。
つまりトランジション採用は、情報・体験・信頼の3要素すべてが高い水準で揃う、相互理解がもっとも深まる採用プロセスです。「知らない人を採用する」のではなく、「すでに互いをよく知る仲間を正式に迎える」という感覚に近いプロセスであるため、入社後のミスマッチが構造的に起きにくくなります。
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4、相互理解の深度を上げる採用設計の実践
(1)リファラル採用を機能させる「情報設計」の考え方
リファラル採用で定着率を高めるには、紹介者が候補者に伝える情報の質を意識的に設計することが重要です。多くの企業が見落としているのが、紹介者に「何を伝えてほしいか」を明確に共有していない点です。
採用担当者が社員に対して「魅力だけでなく、大変な点や課題も正直に話してほしい」と伝えることが、相互理解の深さを高めます。入社前にリアルな情報を受け取った候補者ほど、入社後の期待値のズレが小さく、定着につながりやすいからです。
具体的な実践例として、以下の2つが挙げられます。
例1)紹介前の「ブリーフィング」の場を設ける。社員が知人を紹介する前に採用担当者と30分程度の対話の場を持ち、現在の採用背景・求めているスキルや人物像・働き方の実態(良い面も課題も含む)を共有します。紹介者が解像度の高い情報を持てるようになり、候補者との会話の質が上がります。
例2)紹介者と候補者と採用担当者の三者面談を設ける。通常の選考に加えて、紹介者を交えたカジュアルな対話の場を設けることで、候補者は「知人がいる環境」で安心してリアルな質問を投げかけられます。
(2)相互理解をさらに深めたいときにフリーランス採用が有効な理由
リファラル採用を活用しつつも「もっと採用後のミスマッチを減らしたい」「実際に活躍できるかどうかを確認してから正社員化したい」と考える場合、フリーランス採用という選択肢が有効です。
フリーランス採用は正社員採用と比べて応募倍率が低く、転職活動をしていない優秀なエンジニアにアクセスできる可能性があります。正社員転換を前提とせず業務委託として働く中で相互理解を深められるため、「まだ転職は決断できていない」というエンジニアにとっても参加しやすく、実際に働いてからの判断になる点が大きなアドバンテージです。
(3)採用手法を組み合わせた設計アプローチ
相互理解の深度モデルの視点から採用設計を考えると、3つの手法は「どれか1つを選ぶ」ものではなく、「状況に応じて組み合わせる」ものとして捉えると効果的です。
たとえば、以下のような設計が考えられます。
まず社員にリファラル(知人紹介)を依頼し、候補者の母集団を形成する。この段階で「転職は決断していないが話は聞いてみたい」という潜在層との接点を作ります。
接点ができた候補者には、まずフリーランスとして業務委託でプロジェクトに参画してもらう。実際に働く体験を通じて、双方の相互理解を深めます。
一緒に働く中で「長期的に一緒に働きたい」という確信が双方に生まれたら、トランジション採用として正社員転換の対話を始めます。
このように、リファラルで接点を作り→フリーランス採用で体験を積み→トランジション採用で正式に仲間に迎えるという流れを意識することで、採用全体の定着率を構造的に高めることができます。

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5、まとめ:定着率は「手法」ではなく「理解し合う設計」で決まる
リファラル採用が定着率を高める本質的な理由は、「紹介者がフィルターになるから」ではありません。知人紹介という関係性が、情報と信頼を先行提供することで、入社前の相互理解を深めるからです。
定着率を本当に決めているのは、採用手法そのものではなく、「入社前に企業とエンジニアがどれだけ互いを理解し合えているか」という相互理解の深さです。リファラル(知人紹介)→フリーランス採用(実際に一緒に働く)→トランジション採用(双方向の見極め期間)というモデルは、相互理解が段階的に深まっていく連続体として理解できます。
採用に課題を感じているなら、手法を変える前に、まず「自社の採用プロセスでどこまで相互理解が深まっているか」を問い直してみてください。re:shineでは、フリーランスとして実際に働いてから正社員化を検討できるトランジション採用の仕組みを提供しています。相互理解を深める採用設計に関心のある方は、ぜひ参考にしてみてください。
採用は、エンジニアひとりひとりと真剣に向き合う営みです。「理解し合う設計」を積み重ねることで、お互いにとって納得のある採用が実現できると信じています。
この記事を書いた人
re:shine編集部
エンジニアと企業のより良いマッチングを目指し、採用成功に役立つ多彩なテーマを発信しています。深刻な人材不足や働き方の多様化など、変化の激しいエンジニア採用市場において、採用担当者の皆様に寄り添い、明日から活用できる情報をお届けします。
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