
「リファラル採用を始めたいが、うまくいかないという話をよく聞く」「やめとけと言われる理由が気になって、踏み切れていない」と頭を抱えている採用担当の方も多いのではないでしょうか。
リファラル採用を巡っては、人間関係のトラブルや制度の形骸化といったネガティブな声が聞かれます。一方で、導入企業の割合は増え続けており、採用手法のひとつとして確実に定着しつつある状況もあります。
この記事では、リファラル採用が「やめとけ」と言われる理由を構造から整理したうえで、機能させるための制度設計のポイントを解説します。
読み終える頃には、「やめとけ」という声の本質が見えてきて、次に取るべき具体的なアクションが明確になるはずです。
- 1、リファラル採用が「やめとけ」と言われる5つの理由
- (1)人間関係が壊れる──不採用後の「気まずさ」が連鎖する
- (2)馴れ合い選考でミスマッチが起きる
- (3)制度が形骸化し、紹介がゼロになる
- (4)同質化が進み、組織が硬直化する
- (5)報奨金設計の誤りが法的リスクを生む
- 2、「やめとけ」の本質はリファラルそのものではなく制度設計の問題
- (1)機能しない企業と機能する企業の違い
- (2)デメリットの9割は「設計前に解決できる」
- 3、エンジニア採用でリファラルが機能しない特有の理由
- (1)技術コミュニティの信頼が逆に壁になる
- (2)「紹介して失敗したくない」という心理的ハードル
- 4、リファラル採用を機能させる制度設計の5つのポイント
- (1)「誰を紹介してほしいか」を言語化して全社に共有する
- (2)不採用時の連絡フローを事前に設計する
- (3)インセンティブは「金額」より「感謝の可視化」で設計する
- (4)選考基準は通常選考と完全に統一する
- (5)他の採用チャネルと組み合わせてリファラル依存を避ける
- 5、まとめ:リファラル採用を「やめた企業」が見落としていたこと
1、リファラル採用が「やめとけ」と言われる5つの理由

リファラル採用の実施企業は年々増加しており、株式会社TalentXの調査によると、2018年に41.7%だった実施率が2025年には62.5%に上昇しています(*1)。採用手法の選択肢として広く認知されるようになった一方で、「やめとけ」という声も依然として聞かれます。その理由を5つの観点から整理します。
*1 参考:株式会社TalentX「リファラル採用の実施状況に関する企業規模・業界別統計レポート2025年版」2026年3月
(1)人間関係が壊れる──不採用後の「気まずさ」が連鎖する
リファラル採用で最もよく語られるリスクが、不採用時の人間関係トラブルです。紹介者は「この人ならきっと採用される」という期待を持って推薦するため、不採用になった際に候補者との関係が気まずくなるケースが少なくありません。さらに、紹介者が社内の信頼を失ったと感じれば、次の紹介に消極的になり、制度全体の機能低下につながります。
最悪のケースでは、不採用を機に紹介者が退職を考え始め、連鎖退職に発展することもあります。こうしたトラブルは「リファラル採用のせいで職場の空気が悪くなった」という印象を生み、採用担当者が「やめとけばよかった」と後悔する原因になっています。
(2)馴れ合い選考でミスマッチが起きる
「友人が推薦してくれたのだから」という安心感が選考基準を甘くするケースも多く見られます。スキルや経験が自社の求めるレベルに達していないにもかかわらず、紹介者への配慮から採用に踏み切った結果、入社後にミスマッチが発覚するパターンです。
採用の目的が「紹介者の顔を立てること」になってしまうと、通常の選考基準が形骸化します。こうした馴れ合い採用を繰り返すと、組織全体のパフォーマンスが低下するだけでなく、採用担当者が「リファラルは質が低い」という誤った結論を引き出す原因にもなります。
(3)制度が形骸化し、紹介がゼロになる
制度を導入したものの、紹介が一件も集まらないまま立ち消えになる企業は珍しくありません。「紹介する知人がいない」「誰を紹介すればよいかわからない」「制度が複雑で動けない」といった理由から、社員が積極的に動かないケースです。
制度の意義や対象者像が社内に十分に共有されていないと、社員は動きようがありません。全社への周知が一度きりで終わり、その後フォローがない場合も同様です。制度は作ったが機能しなかったという経験が、「リファラルはやめておけ」という認識を広める一因になっています。
(4)同質化が進み、組織が硬直化する
リファラル採用に依存しすぎると、採用する人材の背景・価値観・スキルセットが似通ってくるリスクがあります。人は自分と近い属性の人を紹介しやすいため、気づかないうちに同質な組織が形成されていきます。
多様なバックグラウンドを持つ人材が入ってこなくなると、組織の思考が硬直化し、変化への対応力が低下します。特にスタートアップやベンチャー企業では、成長フェーズに必要なスキルセットが急速に変化するため、同質化のリスクは深刻です。
(5)報奨金設計の誤りが法的リスクを生む
リファラル採用で社員に報奨金を支払う際には、職業安定法上の規制を理解しておく必要があります。厚生労働大臣の許可なく職業紹介を行い、その対価として金銭を支払うことは、同法に抵触するおそれがあります(*2)。
インセンティブを「職業紹介の報酬」として位置づけてしまうと違法になりかねないため、就業規則・賃金規程への明記や、金額が職業紹介サービスの相場(年収の30%〜40%程度)を大きく超えないよう設計することが求められます。法的リスクを知らないまま高額報奨金を設定し、後から対応が必要になる企業も存在します。
*2参考: 職業安定法(e-Gov法令検索)2026年7月

関連記事▶︎エンジニア採用にリファラルが効く理由と実践ポイント
2、「やめとけ」の本質はリファラルそのものではなく制度設計の問題
1章で整理した5つの理由を改めて見渡すと、ある共通点に気づきます。どの問題も「リファラルという手法が本質的に欠陥を持っている」のではなく、「制度設計が不十分なまま動かしている」ことが根本原因になっています。
(1)機能しない企業と機能する企業の違い
リファラル採用がうまくいっている企業には、共通して「制度の前提を言語化している」という特徴があります。誰を紹介してほしいか、不採用になったときにどう対応するか、報奨金はどういう条件で支払われるか、といった運用のルールが明文化されており、全社員が理解している状態です。
一方、機能しない企業では「制度は口頭でなんとなく周知」「特に規程はない」「紹介してくれた人へのフォローは担当者の判断次第」という状況が多く見られます。曖昧さが社員の心理的ハードルを高め、紹介が起きない構造を生んでいます。
エン・ジャパン株式会社の調査によると、リファラル採用を制度化している企業のうち「うまく運用できている」と答えたのは40%にとどまります(*3)。つまり、制度を作っただけでは不十分であり、設計の質が成否を分けるということです。
*3 参考:エン・ジャパン株式会社「リファラル採用(社員紹介)意識調査」2017年
関連記事▶︎リファラル採用で定着率が高い本当の理由と採用設計の見直し方
(2)デメリットの9割は「設計前に解決できる」
1章で挙げた5つのデメリットを、制度設計の観点から見直してみましょう。
不採用後のトラブルは、連絡フローと不採用時の説明方針を事前に決めておくことで防げます。馴れ合い選考は、通常選考と同じ評価基準を明文化し、紹介者にも事前に伝えることで避けられます。制度の形骸化は、対象者像の言語化と定期的な社内周知によって解消できます。同質化リスクは、リファラル採用を他のチャネルと組み合わせることで管理できます。法的リスクは、就業規則への明記と金額設計で対処できます。
いずれも「制度を動かし始めてから悩む問題」ではなく、「制度を設計する段階で解決できる問題」です。リファラル採用が機能しない企業の多くは、設計の手前で躓いています。「やめとけ」と言われる理由の本質はここにあります。
3、エンジニア採用でリファラルが機能しない特有の理由
エンジニア採用においては、一般的な職種とは異なるリファラルの機能不全パターンが存在します。エンジニアコミュニティの特性を理解せずに制度設計をすると、制度がより機能しにくくなります。
(1)技術コミュニティの信頼が逆に壁になる
エンジニアのコミュニティは、技術的な信頼関係を軸に形成されています。勉強会・OSS活動・SNSでのつながりなど、仕事を超えた横断的なネットワークが存在します。こうした関係性があるからこそ、「あの会社に紹介して失敗させたら、信頼を損なう」という意識が強く働きます。
一般職種と比べて、エンジニアは紹介先の会社の技術スタック・開発文化・チームの雰囲気を事前に把握したうえで紹介判断を行う傾向があります。つまり、エンジニアが紹介をためらう場合、単なる心理的ハードルではなく「紹介に足る情報が不足している」という問題が背景にある場合も多いのです。
(2)「紹介して失敗したくない」という心理的ハードル
「紹介した後輩がすぐ辞めた」「紹介した友人がチームになじめなかった」という経験をしたエンジニアは、次の紹介に慎重になります。この心理的ハードルは、友人との関係への配慮だけでなく、「自分の技術的な目利き力への自信」とも結びついています。
こうした特性を踏まえると、エンジニア向けのリファラル施策では、紹介者が事前に確認できる情報の質を上げることが有効です。たとえば、現場で活躍しているエンジニアによる技術ブログの発信・開発環境の公開・カジュアル面談の設計など、紹介者が「この会社なら安心して勧められる」と感じられる材料を整えることが、エンジニアのリファラルを活性化させる鍵になります。
関連記事▶︎エンジニア採用広報とは何か?役割と始め方を徹底解説
4、リファラル採用を機能させる制度設計の5つのポイント
では、具体的に何を設計すればよいのかを整理します。5つのポイントを順に見ていきましょう。
(1)「誰を紹介してほしいか」を言語化して全社に共有する
リファラル採用で最初に取り組むべきは、「どんな人を紹介してほしいか」を明文化することです。職種・スキル・経験年数だけでなく、チームとの相性や価値観まで含めた人物像を社員が理解できる形で伝えます。
例1)「バックエンドエンジニア歴3年以上で、小規模チームでの開発経験がある方。技術選定に積極的に関わりたいタイプの方が特に合っています」
例2)「正社員ではなくフリーランスでの参画でも歓迎です。週3日から稼働可能な方で、将来的に正社員転換に興味がある方も大歓迎です」
人物像が明確になるほど、社員は「あの人が合いそう」と具体的なイメージを持ちやすくなります。逆に「良い人がいたら紹介してください」という呼びかけは、誰も動けない状態を生みます。
(2)不採用時の連絡フローを事前に設計する
リファラル採用のトラブルのほとんどは、不採用時の対応が決まっていないことから生じます。「誰が、いつ、どの順番で、何を伝えるか」を制度設計の段階で決めておくことが必要です。
推奨フローの例を示します。
①候補者への不採用連絡は、紹介者への連絡より先に行わない。
②紹介者には「ありがとうございました」という感謝のメッセージと、不採用の判断軸(スキル・経験のどの観点で見送りになったか)を簡潔に伝える。
③候補者への連絡は企業が責任を持って行い、紹介者が間に立たないようにする。
「断ったら気まずくなりそう」という社員の不安を取り除くためにも、こうしたフローを明示することが、制度を持続可能にする鍵になります。
(3)インセンティブは「金額」より「感謝の可視化」で設計する
報奨金が高ければ紹介が増えるという思い込みは、必ずしも正しくありません。エン・ジャパンの調査では、インセンティブを支給している企業でよく見られる支給額は「3万円〜10万円」が最多です(*3)。金額が目的になると、自社にマッチしない人材を紹介してしまうケースも出てきます。
大切なのは、紹介してくれた社員への感謝をきちんと可視化することです。採用の可否に関わらず、紹介という行動そのものを称賛し、全社的に共有する文化が長期的なリファラルの活性化につながります。金額よりも「あなたの紹介を大切にしている」という姿勢が、社員の動機になります。
*3 参考:エン・ジャパン株式会社「リファラル採用(社員紹介)意識調査」2017年
(4)選考基準は通常選考と完全に統一する
紹介者への配慮から選考基準を甘くすることは、短期的には摩擦を避けられるように見えても、長期的には組織のパフォーマンス低下と社員のモチベーション低下を招きます。「リファラルで入った人は基準が低い」という印象が社内に広まれば、制度への信頼が失われます。
紹介者・候補者の双方に対して、「リファラル採用であっても選考基準は通常と同じであること」「不採用になる可能性があること」を選考前に明示することが重要です。これを事前に伝えておくことで、不採用時のトラブルも大幅に減らせます。
(5)他の採用チャネルと組み合わせてリファラル依存を避ける
リファラル採用は強力な手法ですが、一本依存は危険です。人材の同質化リスクや、特定の社員に紹介の負荷が集中するリスクを分散させるためにも、ダイレクトリクルーティングや求人媒体、フリーランス採用といった他のチャネルと並行して運用することが求められます。
特にエンジニア採用においては、正社員採用一本ではなく、フリーランスエンジニアのネットワークを活用した採用チャネルも検討に値します。転職市場に出てこない転職潜在層へのアクセスは、リファラルだけが持つ強みですが、その強みを最大化するためにも、他のチャネルとの役割分担を意識した設計が有効です。

関連記事▶︎フリーランスエンジニア採用を戦略的に使う方法と進め方
5、まとめ:リファラル採用を「やめた企業」が見落としていたこと
リファラル採用を「やめた企業」が見落としていたのは、手法そのものへの問題ではなく、設計段階での詰めの甘さでした。不採用時の連絡フローを決めていなかった。紹介してほしい人物像を言語化していなかった。選考基準を統一せずに感情で採用を決めてしまっていた。こうした「設計の抜け漏れ」が、後からトラブルや形骸化という形で顕在化していたのです。
リファラル採用の本質は、社員一人ひとりが持つ信頼関係のネットワークを採用に活かす仕組みです。そのネットワークは、エンジニアのような専門職であれば、技術コミュニティを通じて広大に広がっています。紹介してくれた社員への感謝、候補者への誠実な対応、そして公平な選考基準という3つを制度設計の中心に置くことで、リファラル採用は組織の採用力を底上げする手段になり得ます。
「やめとけ」という声に耳を傾けることは大切です。しかしその声の本質を読み解くと、それは「設計なしでやってはいけない」という警告であって、「使ってはいけない手法だ」というメッセージではありません。採用に課題を感じているなら、まずは自社のリファラル採用の設計を見直してみることから始めてみてください。
この記事を書いた人
re:shine編集部
エンジニアと企業のより良いマッチングを目指し、採用成功に役立つ多彩なテーマを発信しています。深刻な人材不足や働き方の多様化など、変化の激しいエンジニア採用市場において、採用担当者の皆様に寄り添い、明日から活用できる情報をお届けします。
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